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とある獣人の憂鬱

佳純

INDEX

  • あらすじ
  • 01 質問に来た悩みの種
  • 02 訓練場での疑問
  • 03 休日のヴォルク(森)
  • 04 第三王子個人教授の論文
  • 05 できすぎた論文
  • 06 任務遂行?
  • 07 任務遂行の続き
  • 08 番外 イングリフ様の憂鬱
  • 09 第三王子個人教授のご乱心
  • 10 ご乱心の続き
  • 11 ヴォルク、落ち込み中
  • 12 第三王子の誕生日の舞踏会
  • 13 舞踏会を後にして。
  • 14 番外 ご乱心時の第三王子個人教授
  • 15 番外 第三王子の誕生日
  • 番外 ご乱心時の第三王子個人教授

    「ふざけるな!」

    ヴォルクが急に怒鳴り出した。
    なんで?

    「テレビの観すぎだ!アニメと一緒にするんじゃない!」
    「そんなことないもん!理論的には可能だもん」
    「理論的に可能だからと言って、やっていいことと悪いことがある!」

    やっぱ。ダメかな?

    「わかっているのか?人を人の手で作るってことだぞ。もし失敗したとしても、その失敗した個体に、人格がそなわることだってあるんだ」
    「ちゃんと成功させるわ!」

    「成功しなかったら?」
    「成功しなかった時のことを考えて、何もしなかったら科学は進歩しないわ!」

    「その結果、生まれてくる子供のことを考えているのか?」

    それで、可愛い猫耳獣人ベイベが生まれるのよね。
    何か悪いことでもあるのかしら……。

    でも、ヴォルクが怒るってことは、イングリフさんが言っていた、人面犬のような子供が生まれるかもしれないってことかしら?

    それは困るわ……。

    「失敗するということは、その子が死ぬということなんだぞ!死ななかったとしても、何らかの障害が残るかもしれない。完全なコーディネーターが出来上がるまでに、何人の犠牲が出ると思っているんだ!」

    なんだ、そんな心配?
    私がそんなことをすると思っているのかしら?

    「私は、犠牲なんて出さない。必ず成功させる」

    だって、何が何でも愛くるしい猫耳獣人ベイベを作りたいもの。
    失敗なんて、するはずないじゃない。

    もし、人面犬になる恐れがあるというのなら、遺伝子操作をして必ず愛らしい猫耳獣人ベイベにしてみせるわ。

    「成功したとしても、実験体として、一生を送ることになるかもしれないんだ……。マリアンヌ殿が貸してくれたマンガでもそうだったじゃないか……」
    「あ、やっぱり読んでたのね。やけに詳しいと思った」

    こんなに反対されるんなら、貸すんじゃなかったかな。

    「……マリアンヌ殿が貸してくれたんじゃないか」
    「ヴォルクは忙しいから読んでないかな?って思ってたの」

    でも、気に入ってくれたみたいだから、よかったわ。
    この国で、アレが受けるかどうか、知りたかったのよね。

    うまく行ったらアルト様にも勉学の一環ですとか言って、強制的に見せてみようかなと思ってたのよ。

    「読まないで返すなんてことはしない」
    「じゃ、後で続き持ってくるね」

    ヴォルクが気に入るんなんて、やっぱり趣味、合うのかもしれない?

    「続き?終わってたじゃないか。最後のページに完って書いてあったぞ」
    「あの話はあれで終わりだけど、別の視点の続編が出てるのよ」

    このまま引きこんでやる、フフフ……。

    「DVDも観る?かっこいいのよ。機体とか武器とか。私は基本的にシンプルな武器が好きなんだけど、あそこまでゴテゴテいろいろ付いてると、あれはあれでいいわ。使い難そうとかいうのは、もうどうでもいいかもって思っちゃう。それは科学でクリアすればいいってことだもんね。専門じゃないけど、いつかあれに出てた機体を作るのが夢なのよ」

    「それならその機体の方を作ればいいじゃないか」
    「それもいつか作るけど、今、私が興味を持っているのは、ヴォルクなの」

    猫耳獣人ベイベよ!
    ふさふさの毛とか、もさもさの手触り。
    コロコロの猫耳。

    「え?」
    「ヴォルクの研究に、人工子宮が必要だから作るの」

    「俺が、ちゃんとした人間じゃないからか……?」

    「え?」

    ヴォルク?
    何を言っているのかしら?

    「俺がこんな中途半端な獣人だから……、だから、そんな実験に使ってもいいって思ったのか?」

    「そんな……。そんなこと思ってない!」

    あ、ヴォルクの地雷か?
    まっずいこと言っちゃったのかしら。

    「もし、俺がまっとうな人間だったら、マリアンヌ殿はこんなこと、言ってなかっただろう?」

    「え……」

    やば、猫耳の獣人ベイベのことがばれたらまずいよね。
    ってか、ヴォルクが普通の人間だったら、愛くるしい、猫耳の獣人ベイベにならないじゃない。
    そんなの却下よ。

    「協力はできない……」

    なんですって?
    私の愛くるしい猫耳獣人ベイベ計画が崩れるじゃない。

    「違う!私はヴォルクが獣人だから実験してもいいなんて、思ってない!」

    もう、なんでそうなるのかな?
    私は純粋に、愛くるしい猫耳獣人ベイベが欲しいだけなのに!

    「……もし成功しても、獣人の血を引き、不完全な個体としてしか生きられないんだ」

    「不完全な個体?」

    何を言ってるの?
    獣人って、獣になれたり人間になれたり便利じゃない。
    理解不能だわ。

    「獣人は、完全な人間ではない。人間から見れば、モンスターなんだよ」
    「私は、ヴォルクをモンスターだなんて、思ってないわ」

    「人の時は、普通の人間と変わらない。だが、獣の時は、力は強くなるし、嗅覚も聴覚も人の何百倍も良くなる。それをモンスターと呼ばないで、何と呼べばいいんだ?」
    「良いじゃない。強くなれるんだから」

    「その強さで、人間を……、マリアンヌ殿を傷つけてしまうかもしれない」

    は?

    「ヴォルクは、そんなことしない」

    つーか、何を考えているの?
    なんで私が傷つくのよ?

    「出て行ってくれないか……」

    「行かない」

    なんか、思いっきり誤解してない?

    「なら俺が出て行く」

    そう言って、ヴォルクは部屋を出て行ってしまった。

    ……しかたがない。
    この部屋に落ちてる毛根を拾って、そこから何でも言うことを聞くクローンを作って、そのクローンで可愛い猫耳獣人ベイベを作ろうか?

    でも、それじゃ、ちょっと、つまんないかも……。

    10/11/02 22:39 佳純   

    ■作者メッセージ
    10話で第三王子個人教授が考えていたことが、コレです。
    ちょっとした、すれ違いだったんです。

    話が混乱してすみません。
    次は、もう少しすっきりとした形のものを載せます。
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