連載小説
[TOP][目次]
移り変わりの
小さな女の子は
何かを話しかけてきた

僕はちょっぴり怖かった
その女の子がなんていっているのか
僕にはよくわからなかった


草花の彩りに緑が増えてきた

前よりも頻繁にイリス様はオレのところに訪れるようになっていた

「ねえシュイエ!」

オレの仕事を横から見ていたイリス様が唐突に話しかけてきた

「あれってヒマワリの花?」

イリス様はある場所を指し示して訪ねてきた
そこは鉢に植えられたヒマワリがある場所だった

最近虫のせいでイリス様のよく通る声でも時々聞き取りづらい

「え?あ、はい、そうです」

イリス様は俺の言葉にこくびを傾げた

「ふ〜ん…小さいのね?
 私が知っているヒマワリの花はとても大きかったと思ったんだけど…」

「あ、たぶんイリス様のおっしゃる花なら別のところに…」

「え!?見たい!どこにあるの!?」

すごい食いつきようだった

「まだ咲いてはいませんが…」

「いいの!」

オレは道具を片付け
イリス様をヒマワリの場所へ案内する

「ヒマワリには大きいものと小さいものがあったのね」

その道中でイリス様は子供のような
生き生きとした表情をしながら話しかけてくる

「あ…えっと、もともとヒマワリは大きいものが自然なんです
 先程のヒマワリは小さな鉢に植えて大きく育たなくしているんです」

言い終わるまでにイリス様は足を止めていた

「なんで?どうしてそんなかわいそうなことをするの?」

聞き返された時にはもうさっきまでの表情はなくなっていた

「えっと、それは、花粉が少なくて種がつきづらいかわりに
 花が長く咲くのであの…みなさんに喜ばれるから…だと思います」

虫の声がうるさすぎてとても静かだった

「…そっかあ…」

イリス様はうつむき再び歩きだした

「…イリス様」

しばらく歩いたあとオレは話しかけた

「え?なに?…あ!」

イリス様はずっと俯いたままだったようで
もうすでにヒマワリが見えていたことに気付かなかったようだ

「大きい!2メートルはあるよ!?」

さっきまでの雰囲気とはうって変わって
とても目を輝かしていた

しばらくはしゃいでいたと思ったら急にイリス様は振り返った

イリス様が起こす行動が唐突なのはいつものことだが
パッタリと目が合ってしまったことに驚き
息が詰まってしまった

「ねえシュイエ!」

お決まりの文句でオレを呼ぶ
まだ鼓動は落ち着かない

「二人で木をそだてよう!」

そう言った無邪気な声はとてもよく聞こえていた

「…大きな木を育てよう?」

そう言い直したイリス様の声は少し大人びていた


…オレの鼓動は速くなるばかりだった
11/10/23 17:58更新 /
戻る 次へ

TOP | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.30c