連載小説
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「シュ〜イエっ!」

プランターに植えている植物の葉を順に切っていると
急に目の前が真っ暗になった

瞬間的に背筋に寒気が走る
が声の主はわれているためすぐに息を整える

「イ、イリス様?」

「わ〜い!シュイエびっくりした!?」

そう言いながらもイリス様はまだ何かあるのか手を開かず
オレの頭は抱え込まれた状態になっている

「は、はいびっくりしました」

そう答えるとやっと
光が差し込んで…は来なかった

オレの目の前にはイリス様の顔が逆さに写り
イリス様の長くしなやかなアッシュブラウン色の髪が
午後の日差しを遮っていた

「何してるの?」

イリス様はオレの肩に手を置き
上からのぞき込みながらそう訪ねてくる

「これのことですか?」

もうすでに興味の矛先を変えていたイリス様に
ゆっくりと聞き返す

伝わってくるあたたかな温もりが
まだ鼓動の落ち着かない心臓をゆっくりとなだめてくれる
光を遮ったモノは決して怖いモノではなかったと

「うんそう!なんで葉っぱを半分に切っちゃうの?
 まだこんなに元気なのに…」

イリス様はとても悲しそうにかわいそうだということを
目で訴えかけてくる
なぜこんなにも素直なのだろうか

「これはですね、
 もっと大きく育つように大きくて良い葉だけを残して
 ほかのところに余分な栄養がいかないようにしているんです
 えっと、植物の周りの雑草を抜くことと同じことですよ
 こうした方が、ほら、あの、喜びます」

ほらオレなんて
大して植物の気持ちも考えたこともないくせに
勝手に喜ぶだなんて言っている
これはただ単に植物を育てる上で身に付けたことだ

そんなことを考えているとある異変に気づいた
いつの間にかオレの隣にしゃがんでいたイリス様は
いつも食いつくように話をするはずなのに
今は呆然とオレを見続けていた

「あ・・・」

少しすると気がついたように口を開く

「へえ〜そうなんだ!?
 シュイエって植物のことをよくわかってるんだねえ
 私、シュイエがそんなに喋ってるの初めて見た!
 今のシュイエってとっても楽しそうだったよ!
 そんなシュイエを見れて私とっても嬉しい!」

今度はオレが呆気にとられる番だった

ほらこれだからダメなんだ
イリス様はオレに居心地のいいモノを与えてくれる
だから決めかけていたオレの心を鈍らせる

どうせいつかはわかるんだ
いつであろうと結果にかわりは無い


だから
今だけは…
11/11/06 14:49更新 /
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■作者メッセージ
11月2日に感想を下さったレイラ様

更新が遅くてすみません
まだ1話しか進んでおりませんが
この話の終わりにある「次へ」もしくは
タイトルの雛〜欲の下にある「次へ」を押してもらいますと
次話の「移り変わりの」を読んでいただくことができます
最後になりましたがここまで読んでくださり
本当にありがとうございます!!
続きが読みたいと言ってくださりとても嬉しいです!
これからも頑張ります!

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