再会 NEXT

 「う〜ん、今日も疲れた……」
 転校してきてここでの生活にも慣れ、学校生活にも慣れ。陸上部に入っていて、それなりに充実した日々を送っていた。
 両親は不在。唯一の兄弟である2歳年上の兄は、大学生で。寮に入っている為、実質家で1人暮らしだ。
 今日も暗い電気のついていない家へ、帰る。
 「ただいま〜」
 ガチャっと玄関の鍵を開けて、扉を開けば何故だかリビングのほうに灯りが点っていた。
 「お帰り、静藍」 
 「!?…その声はまさか…」 
 バタバタと慌ただしい足音がしたと思ったら、バタン!と大きな音がしてリビングの扉が開いた。
 久しぶりに聴いた、妹の声。驚きに目を見張り呆然と突っ立ち、自分を真っすぐに見つめるその瞳。
 「お兄ちゃん!?」
 「静藍、元気にしてたか?」
 「…もしかして大学の寮、追い出されちゃったの?」
 「まったく…信用ないな。俺は可愛い青蘭のことが心配でこうやって家に…」
 「あ〜はいはい。で、本当の理由は?」
 「どうしても寮に入んなきゃマズいって奴がいたから、代わってやったんだよ。俺は家から通えないほどじゃないし」
 (あ〜煩いのが帰ってきちゃったよ)
 「静藍、今、何か言っただろ?」
 「いえ、何も…」
 家に帰ったら、大学寮にいるはずの兄の和真の姿が。
 静藍は驚きと落胆と後悔を瞳に浮かべ、ため息を吐いた。
 「ご飯は作ってあるからなぁ、早く着替えて一緒に食べるぞ」
 「はいはい」
 兄の和真が料理が得意なのは知っているので、特に不満も疑心も抱かず自分の部屋に戻った。

 和真と暮らすことに不満はあったが、久しぶりに光の灯った家に帰れたことの安堵感は確かにあった。
 
 
10/11/20 22:22 up
久遠
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