連載小説
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9
雲ひとつない青い空。いわゆる晴天というべきか




『―――うーん…気持ちいい天気…』



私は空に向かって手を伸ばした







今日は休日のため、街に繰り出した



もちろん一人で



『きっと、エグザとか知ったら怒るだろうな』



危ないとか護衛をつけろとか



個人教授にはもったいなさすぎる話だし





『護身術ならヴォルクに教わってるもんね』





私は深呼吸をすると、賑やかな声が聞こえる街の中に歩き出した














『……少し派手すぎるかな?』


様々なアンティークを眺めながら、頭を抱える




『フィーナ様は、どういうのが好きなのかな?』


今フィーナ様と仲良くなるために、プレゼントをあげようと勢い込んだのはいいが(失礼なことをしたお詫びに)私は一切フィーナ様のことを知らなかった


『やっぱり何が好きなのか聞いてくれば良かったな』




その時、ふと肩を叩かれた



「お嬢さん、お一人ですか?」


『……っ!!』



思わず肩がビクッと反応する。恐る恐る振り返れば……そこには意外な人物が立っていた




『―――リ……!』


バッと口を押さえられた


「しーーっ。大声を出すな。せっかく女共から逃げてきたのを無駄にする気か」



(そんなこと知ってるわけないじゃない)


私は心の中で不満を漏らした






















『もう…いきなりなんですか。びっくりしましたよ』


「当り前だ。驚かそうとしたんだからな」



この悪気のない態度……まぁいつものことだから気にしないけど




「…………」


『なんですか?じろじろと……』


「お前…一人か?」


『えっと、まぁ、はい』


「案じなくても、俺は誰かに言わんぞ」



不貞腐れたように、リオは言う



『……ふふっそうですね。失言でした』


「何が可笑しい…」


『いえ……リオらしいなって』


「…納得出来んな。よし。罰としてこれから俺はお前に付き合ってやる」


『えっ…?なんでそうなったんですか?それに罰なら普通、私がリオに付き合うのでは……?』


「俺が今決めた。文句を言うな」


『楽しくないですよ?女性物の小物とか見るだけですし……あとそれにお嫁さん候補は探さなくて……』


「文句は聞かんと言っただろうが、行くぞ」


するりと私の手を掴み指を絡ませる。




『あっちょっと!リオ!』




















「本当に女物なんだな」


『だから言ったじゃないですか、やっぱり帰ります?』


「いや、帰らん。お前を一人にすると危なっかしいからな」


『もしかして、私を心配して付いてきてくれてるんですか?大丈夫ですよ。ヴォルクに護身術は習っていますから』


「そういう問題じゃないんだがな……まぁいい。それにしてもさっきから店に入っては買わずじまいだが、何を探してるんだ?」


『フィーナ様に何か差し上げようと思ったんですけど、何がいいか決まらなくて』


「フィーナって……アルトの花嫁候補か?」


『はい。失礼なことしてしまいまし、何かお詫びにしたいなって』


「フッ。お前らしいな。だが、あげる物ならアレに決まってるだろ」


『アレって何か知ってるんですか?』


「クッキーだ」


『クッキー…ですか。フィーナ様ってクッキーが好きなんですね』


「そうじゃない。お前が作ったクッキーをあげればいい。俺たちにくれたようにな。物を渡すより、手作りのクッキーの方が何倍にも嬉しいに決まってるだろうが」


『……喜んでくれるでしょうか?』


「当り前だ。お前のクッキーは……世界で一番美味いからな。形はともあれ」


『リオ……たまにはいいこと言いますね……』


「いつもの間違いだ」


『……ははっ!それじゃあ早速材料を買いに行きましょ』


「ああ。そうだな――――やはり、笑ってる顔が似合うな」




『リオー?何か言いましたー?』





「いや。俺の分も作るんだぞ」



















13/07/04 17:20更新 / nayo2
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