連載小説
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10
「おや、朝早くから珍しい」


『あっカリエンさん。おはようございます』


「おはようございます。昨日はフーリオ様と一緒だったようですね」


『あれ?リオが仰ってたんですか?』


「いえいえ。表情で分かります。えらくご機嫌が良かったので」


『?機嫌がいいと私と一緒なのが分かるのですか?』


「そうですね。こちらとしてはすごく不愉快ですが」


『ふ、不愉快なんですか?』


「ええ。ですから次街に出られる際は私を誘って下さい。暇ですから」


なんだろう。笑ってるはずなのに恐い……



『え、えっと…はい』


「それにしても、厩舎に何かご用でも?」


『いえ。朝の散歩をしてる途中に通りかかったものですから。勝手に入ってまずかったですか?』


「別に教授なら構いませんよ。まぁしいて言うなら私に会いに来たと言って頂けた方が嬉しいですが」


『あっ、もちろんカリエンさんにお会いしたかったですよ』


「おや……それは嬉し……」


カリエンさんの言葉を聞き終わる前に、一頭の馬が私に接近してきた


『あっ…こらっ…どこ触って……』


私の体をあちこち鼻でつつく。それがくすぐったくてかなわない


「………教授失礼」


『へっ……カ、カリエンさん!いきなり…だ、抱きかかえて』


「やはり教授の担当馬は替えた方がよさそうですね。オスの馬は色々と危険が潜んでますから」


『あ…れ?カリエンさん何か怒ってませんか?』


「怒ってませんよ。全然」


『いや全然怒ってるじゃないですか!』


「怒ってません」



























「教授、お怪我はありませんでしたか?」


『はい。ポケットの中に興味があったようで』



私はクッキーをポケットから出して見せた




「きっとこれに反応していたんでしょうね。まぁそうじゃなきゃ困りますけど」



言葉の後半、ぼそっとカリエンさんは呟いた



『どうかされましたか?』



「いえ何も。それより、これは誰かに差し上げるのですか?」


『はい。フィーナ様に』


「あぁ、いらしていましたね。きっと喜ばれますよ」


『……ははっそうであってほしいですけど』


「自信を持っても大丈夫ですよ。馬が反応してしまうくらいだから、美味しい筈に決まってます」


『カリエンさん…ありがとうございます』


「いえ。大したことはしてないですよ」


『そんなことないです!あっお礼にクッキー食べられますか?』


「差し上げられるのによろしいのですか?」


『平気ですよ。たくさん作った方を持ってきてるので、後でリオにもあげようと……』


「それならば私がフーリオ様に持っていきましょう。この後部屋に伺う予定でしたから」


『本当ですか?お願いします』


「ええ。早速ひとつ頂いても?」


『どーぞ!食べてください!』


「…………これは」


『ど、どうですか?』


「美味しい……」


『わぁーー!良かったぁ……これでカリエンさんの機嫌も直りましたね』


「機嫌?」


『さっき何か機嫌が悪かったので、でも今はなんだか嬉しそうですよ』


「それはきっと、主人に似たのかもしれないですね」


『主人ってフーリオ様に?』


「さぁどうでしょう?」





















おまけ





「フーリオ様失礼します」


「カリエンか、何用だ?」


「教授からのお届け物ですよ」


「おお、クッキーか?」


「はい」


「…………」


「どうかされました?」


「一枚だけか?」


「ええ」


「もしかして食べたか?」


「ああ。あまりにもいい匂いだったので、つい。でも一つだけ残しておいたので感謝して下さいね」


「……お前は本当によく出来た執事だよ」


「よく言われます」



13/07/04 17:32更新 / nayo2
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