ケスタロージャは、彼女の一言に驚きを隠せなかった。
公園のベンチに座り、ぼーっと空を眺めている男がいた。彼の名はケスタロージャといい、この辺りではかなり有名な写真家である。おとなしく優しい青年で、いろんな人から慕われていた。
しかし、彼には裏の顔があった。
娼夫。それが彼の仕事だった。
しかも彼は、とある「一人」のためだけに躯を捧げた。
ケスタロージャが愛したのは、ミルズという男だった。
彼が「鳴け」と言ったのなら、思いのままに喘ぎ、「穢れろ」と言ったのなら、自身の花芯から蜜をボタボタと垂らす。
ミルズの命令通りに悶え、苦しむのがケスタロージャの喜びだった。
ミルズのためなら、自分の人生をエッチな行為に利用してもかまわない、そう思っていた。
空を眺めながら、ケスタロージャは今日の情事について考えていた。
ひたすらアナルに挿入してもらおうか?
それとも乳を揉んだり、乳首を摘んだりしてもらおうか?
なんて妄想をしていた時だった。
「もしかして、ケスタロージャさん?」
振り返ると、少女がこっちに走って来ていた。その後ろから、少年が歩いてついて来ている。
「お久しぶりです、ケスタロージャさん!」
「……雪さん、……掌さん、お久しぶり…です……。」
ケスタロージャは、小さな声で挨拶を返した。
少女の名前は雪。ミルズが経営するバールに居候している、将来は写真家希望の女の子である。一方、その隣に立っている掌は、中国の方から来た留学生だ。今は、雪と付き合っているらしい。
「……ケスタロージャさん、元気ないですね。どうしたんですか?」
不意に雪が聞いてきた。
「あ…いえ……、特には……何も……。」
「私で良ければ、何でも相談してください!」
「……では…、恋って……どういう物…ですか……?」
「……恋!?」
「ええ…その……私、恋に慣れてなくって……愛情表現とか…どのような方法が良いのか…さっぱりで……。」
「……ケスタロージャさんも、恋とかするんだ。じゃあ、ケスタロージャさんは、どんなのが本当の愛情表現だと思います?」
雪は聞いた。
「……セックスですか?」
「うわっ!ハイレベルでしょ、それ!!でもね……相手がそれでもいいって言うんだったら、私は否定しません。」
「……そうですか。」
「だけど、愛し合って、未来が見えなくなって、目先の快楽に溺れ、相手の言いなりになって躯を交わる関係になってはほしくない。」
「……!」
ケスタロージャは、驚きのあまり声が出なかった。
「……ハハハ、なんか…ごめんなさい!ついつい変な事言っちゃって!それじゃあ!!」
雪は笑いながら去っていった。
ケスタロージャはその笑顔を、ただ呆然と見つめることしか出来なかった。
あの少女は、今の自分を言い当てたのだ。与えられた快楽に捕らわれた、自分の姿が脳裏をよぎる。
「「……もっと…もっと……下さい!」」
「「はあぁ……んん……っ……」」
「「出…る……精液……あぁ…っ!!」」
本当に自分はこのままで良いのだろうか。
「……ミルズさんに……直接…伝えなくては……!」
初めて、ケスタロージャがミルズに打ち明ける想い。
「もう…躯の関係は嫌だ……。心できちんと通じ合いたい……!」
僕の愛情に抗うなんて……「お仕置き」が必要だな。
……!や…止め……て…っ……!
躊躇しないよ。僕から逃げようとしたこと……許しはしない!!
……いやあああああっ!!
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