「悪い」運勢〜2〜


 
 「オリアス、あの香水使ってくれてる?」
 「ああ、まあ」
 「そう?でも、やっぱりさすがに毎日はつけてないのね……」
 「…香水を使う、という習慣が今までないからな」
 「え?そうなの?」
 「なんだ、何でそこで驚く」
 「だってオリアス、いつも何かいい香りがするんだもの」
 「……そうか?」
 クンクンと軽く自分を匂ってみるが、とくに何も香りはしない。
 「何も匂わないが…」
 「そう?軽くだけど、甘い匂いするよ?ちょっと苦めの」
 「……」
 そう言われても、自分の持ち物中には「香水」というものはない。
 中々好みの香りがなく、この近辺。この州、この国には匂いの、香りの「強い」ものしかなく。どれも少し嗅いだだけで頭が痛くなってしまう。
 そう思いを巡らせていると、ふと。ある1つのものが思い浮かんだ。
 「…もしかしたら、アロマキャンドルの香りかもな」
 「アロマキャンドル?」
 「ああ。店の方で客の精神状態を安定させるために使っているんだ。照明の一部として」
 「あのちっちゃなテーブルに乗っていたキャンドル?」
 「そうだ」
 店のインテリアの一部として、そして実用的な意味合いとして使っているアロマキャンドル。その近くで占っているため服にも、体にもその匂いが移ったのだろう。
 「そっか。どうりで甘いけど、苦い匂いも香ってるわけね」
 「そうだろう」
 「でもたまには私の作った香水も使ってね?」
 「ああ」
 「ありがとう」
 お互いの目的地の中間地点まできた。
 昼もすぎていた時にお昼を移動して食べ、しばらく歩いていたため空はすでに茜空に染まっていた。つつと、紫紺が空を覆い始めている。
 「ここで大丈夫か?」
 「うん。オリアス、今日は悪い運勢じゃなかったわ。むしろ、良い一日だった」
 「……そうか」
 「うん。オリアス今日はありがとう、じゃあね」
 「ああ」

 *

 オリアスと別れた後、1人今は亡きお師匠から受け継いだ香水店「 Lucifer's Garden 」へと足を進めた。
 きっと今頃、キアが店番をして待ってくれている。
 「…結構時間経っちゃったからなぁ」
 (――――怒られる、かな)
 少し気持ち早めに歩みを進め、空が暗く一番星が輝き始めた時。
 店まであと300mというところまで来た時。
 「っ!!」
10/09/25 22:36更新 / 久遠

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