「悪い」運勢〜1〜


 今日は、香水の注文を受けて病院に配達に来ていた。
 「あ、」
 (オリアス)
 向こうからやってくる、見なれた姿に少し早足にその人物に向かった。
 
 「オリアス」
 そう声をかけると、向こうも気が付いていたのか顔色1つ変えずにかえしてきた。
 「何だ、君か。香水の営業でもしているのか?」
 「まあ、そんなところ」
 「……ふん。今占ってみたが、今日は運勢が悪い。今日やることは無駄になる」
 相変わらず愛想の1つもないオリアスに、告げられる今日の運勢。それも「悪い」と一言。
 「ちょっ…。嬉しいアドバイスをありがとう」
 思わず声を荒げそうになったが、
 (……そうよね。本人に悪気はないのよね)
 っと、これが何の意味も含まない。ただ素で言っているのだと、本人に何ら悪気も何もなにのだと言い聞かせ。お礼を言うだけにとどまった。

 「ねぇ、オリアス」
 「なんだ」
 「この後の予定は?」
 「診察は終わったから、このまま店のほうに行くだけだ」」
 「なら、ちょっと私に付き合ってよ」
 「……何にだ」
 「ちょっとすぎちゃったけど、どうせオリアスもお昼まだでしょう?私もまだだから、付き合って」
 「………もし俺が食べてたらどうするつもりだったんだ?」
 「その時はその時よ。今回はまだでしょう?」
 「まぁ、まだだが……」
 「なら決定。じゃあ行こう」
 「あ、おい」
 オリアスの言葉を一切スルーして、彼がまだ抵抗しないうちにさっさと病院から連れ去った。



 「ねね、ね。オリアス」
 「なんだ」
 「それ、一口ちょーだい」
 「……ほら」
 「ふふ、ありがとう」
 ルリの言いだした唐突な言葉に一瞬、ほんのわずかな間考えた後。自分の皿から一口だけスプーンですくい。彼女に差し出した。
 オリアスの差し出したスプーンを受け取ることなく、差し出されたかたちのままパクっと口に含んだ。
 「全くお前はいくつだ」
 「え?う〜〜ん……、大人…?子ども?」
 「……俺に聞くな」
 ヴァルクはこんなことしないが、オリアスからみれば同じ「子ども」なのだろうと知っているルリは。たまにこんな事を言って、オリアスをちょっとだけ悩ませる。
10/09/22 21:49更新 / 久遠

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