ったく。
あれほど勝手に城内から出るなと、言っておいてあるのに。
小百合ほど、身勝手な女は初めてだ。
今日は天気もいい。
いつも、アルト様のために研究をなさったりしているのだから、
たまには、庭で散歩でもした方が体にもいいだろう。
万が一のことを考えて、俺がこっそり護衛しながらだが。
「はあ。何してんだろ、俺」
あーだ、こーだと理由をつけてはいるが、
ただ単に小百合と一緒に居たいだけなのだ。
護衛と称しては、しょっちゅう小百合を探す。
まるで、ストーカーじゃねえか。
トントン
「俺だ、小百合はいるか?」
すぐに、エグザがドアを開ける。
「ヴォルク殿!小百合殿は、庭に散歩に行かれました!」
「・・・何!? あの、バカ女。勝手に出るなと言っただろうが」
「・・・散歩を勧めたのは、私であります!庭ぐらいならよろしいかと」
「お前っ。今の状況を分かっているのか!」
小百合がここに来てから、研究の成果は目覚ましく
隣接諸国からの引き抜きが絶えない。
最近は、武力行使の話も多く不穏な話が絶えない。
前なら庭くらいは問題ないが、今は何とも言えない。
小百合は、
「私はここの国にいるよ?アルト様もお優しいし、
ヴォルクや、みんなが好きだから」
軽くそう言ってのけた。
その時からだ。
俺が、小百合を気にかけるようになったのは。
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