私は、お花をゆっくり眺めて気分がよくなっていた。
「・・・小百合様?」
シュイエはいつでも私のことを『小百合様』と呼ぶ。
私は、様をつけられて呼ばれたくない。そんな偉い人じゃないし、距離を感じちゃうから。
だから、私はわざと聞こえないふりをした。
「・・・あの、小百合様。」
シュイエは困った顔をしてこちらを見つめてくる。
シュイエの瞳はとてもきれいで、こちらを見ている表情が可愛すぎて、思わず返事をした。
「何?シュイエ」
「何を歌っているのですか?」
どうやら、鼻歌を歌っていたらしい。
残念ながら、鼻歌だったので覚えていない。
しょうがなく、ごまかすことにした。
「シュイエ!」
私はわざと大きめで凛とした声を出した。
「は、はい!何でしょうか小百合様。先ほどのことですか?お気にさわったので・・・」
私は遮った。
「ストップ、ストップ!!」
シュイエは真剣に困った顔をし始めた。
「私に様をつけて呼ぶの止めてくれない?」
「ですが、小百合様とは身分が違います。」
私はわざとそっぽを向いた。
「・・・小百合様」
シュイエが私を小百合様って呼ぶ間は、返事しないもん。
しばらくして、シュイエは観念したように、少し困ったように私を呼んだ。
「小百合さ、さゆ・・・、小百合?」
私は振り返って満面の笑みで言った。
「よくできました、シュイエ」
シュイエは赤くなった。
「可愛いー!!」
私は笑いながらシュイエを見つめた。
シュイエが何か言おうとしたとき、後ろで声がした。
「小百合!」
あ、ヴォルクだ。
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