「いらっしゃいませー あ、柳田くん!」
「あ、桜井。頑張ってるな〜」
声の方を見てみると、さわやかな高校生が桜井さんと話していた。
……和真が知ったら半狂乱になるだろうな。
と、思うほどのなかなかのイケメンだった。
シフト表を見せろとは言われたけど、監視しろとは言われてないから、言う必要はない。
言ったら八つ当たりされるの、僕だろうし。
でも、八つ当たりされながらっていうのも楽しいかもしれない?
そうは思っても、実際そんなことになったら、和真、面倒だと思うから、言うのはやめておこうと思った。
それに、やっぱり和真が傷つくの嫌だし。
言わなくてもあの和真だもん。
問題なんて、勝手に作って持ってくるから、楽しみは尽きないだろうし。
そんなことを思いながら、僕はぼんやりと桜井さんを見ていた。
桜井さん可愛いから、彼氏くらいいるだろう。
……でも、桜井さん、ホントはどうなんだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「桜井さん、今の彼氏?」
お客さんがいなくなったとき、聞いてみた。
「え、ヤダ。違いますよ。クラスメートの柳田くんです。同じ福祉委員だから、よく話すっていうか」
少し頬を赤くして桜井さんは言った。
「喫茶店でバイトしてて、とっても素敵なバイト先なんですよ」
……そこまで聞いてないけど。
「双子の従兄弟がいて、この子たちが可愛いんです。双子ちゃんたちに懐かれてて、それに困ってる柳田くんが面白いっていうか」
「……ずいぶん、親しそうだね」
「え……。違いますってば」
桜井さんはあわてたようにそう言った。
「お兄ちゃんには、言わないでくださいね」
「そういう子なの?」
「違います!」
桜井さんは慌てたように言った。
「あ……、いえ。お兄ちゃん、前にもそういうことがあって。柳田くんに迷惑かかっちゃうから……」
「わかってるよ。僕も、和真がヘンなの、知ってるから」
「お願いします」
少し、鬼気迫った顔で桜井さんは言った。
「……うん」
桜井さん、和真に内緒にしたくなるような相手、いたんだ。
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