今日、バイト先に和真が来た。
和真は僕が桜井さんのバイト先にいるのを見て、もんのすんごく怒った。
その時は桜井さんがいたからいいけど、これは少しまずかったかもしれない……と思った。
桜井さんが和真を追い返し、僕はそのままバイトを続けた。
あんなに怒った和真、見たことなかった。
もう嫌われちゃったかも。
そろそろ潮時かな……。
そう思いながらマンションに帰ると、すでに電気がついていた。
合鍵、返してもらった方がいいのかも……。
というか、今日のことで突き返されるかもしれない。
『破局』の二文字を頭に浮かべながらリビングに行くと、ソファーに和真が座っていた。
「ただいま」
和真は振り向きもせずに、テレビを観ていた。
テレビの方をじっと見ているんだけど、和真が嫌いな俳優が出ているドラマだったから、別にテレビを見ているわけじゃないんだなと思った。
そうとう怒っていると思った。
大事な妹さんに、和真に隠れて接触してたんだから、仕方がないかもしれない。
「ごめん……」
僕はそう言って和真の隣に座った。
「なにが?」
和真はこちらも見ずに、テレビに視線を向けたまま言った。
背中から冷水を浴びせられたかのような気分だった。
僕、こういうの苦手なんだけど……。
「桜井さんと一緒のバイトしてたこと」
僕がそう言っても、和真は黙ってテレビの方を見ていた。
こんなことなら、妹さんのことを調べようなんて思わなきゃよかった。
でも、ここまで怒ることなのかな?
別に付き合ってるとかじゃなくって、ただバイトが一緒ってだけじゃないか。
「普段は『瑞希ちゃん』なんて呼んでないよ。和真をからかっただけだから」
「からかっただと? 」
和真がすごい顔をしてこっちを見た。
「ごめん……」
逃げたいな……。
「もうしないから……」
でも、逃げたくないとも思ってしまう。
それでも傍にいたいから。
「何で黙ってたんだ?」
「だって、和真、怒ると思ったから」
「わかってて、それでどうして瑞希とバイトなんてしてるんだ?」
「和真が僕よりも大事だって言ってた妹さんを見てみたかったんだよ」
「それならバイトじゃなくってもいいだろ。俺に言えば会わせてやった」
「それだとちゃんと会わせてもらえないって思ったんだよ。どうせまともに話しもさせてくれないだろ?」
「話す必要なんて、ない」
「それが嫌だったんだよ。ちゃんと桜井さんの人柄が知りたかったんだ」
「瑞希の人柄を知ってどうするんだ?」
「どうもしないよ。ホントにどういう子か知りたかっただけだよ」
「知ってどうするつもりだ?」
僕はため息をついた。
「和真が大事だって思ってる子だよ。気にならないわけないじゃん」
「気になる必要はない」
めっちゃ怒ってるし……。
「和真がどういう子のことを好きになるのか、知りたかったんだよ」
「瑞希と会って、わかったのか?」
「桜井さんと会って、いい子だなって思った。和真が自慢するだけあるよ……」
「それだけか?」
和真が近づいてきた。
「え?」
それだけって、他に何があるって言うんだ?
「瑞希を見て、それしか思わないのか?」
和真、目が据わりすぎ……。
「可愛い子だよね。和真とも似てる感じするし」
和真が僕の胸倉を掴んで、ぐっと近寄ってきた。
「惚れたのか?」
どうして発想がそっちにいくんだろう……。
「そんなわけないよ」
「ウソだ。瑞希と会って、惚れないはずがない!」
「惚れてないし……」
和真の顔がとても近くなった。
「お前は瑞希が惚れられないくらいに、マズイ女だと思ったってことか?」
和真、怖すぎなんだけど……。
「何わけわかんないこと言ってるんだよ。そういう対象じゃないことぐらい、和真だって知ってるだろ?」
「ウチの瑞希はそんなの吹っ飛ぶくらいに可愛いんだ!」
吹っ飛ばないし……。
吹っ飛んでるの、和真の方だし。
「和真、落ち着いてよ」
「俺は落ち着いてる!」
全然落ち着いてないよ。
桜井さんが絡むと、和真ってまともな判断力がなくなるんだと思った。
でも、こんなに取り乱すほど桜井さんが大事なんだと思った。
そんな大事な桜井さんにちょっかい出したとなると(出してないけど)、もう、終わりかもと思っていると、和真がキスしてきた。
怒ってるせいか、いつもより激しい。
「和……」
力任せな感じでソファーに押し倒されて、自由がきかない。
「やめ……」
抑え込まれてズボンを脱がされた。
「和真!……っ!」
やばいかも、目がイっちゃってる。
身の危険っていうか、命の危険を感じてしまった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
和真が僕から離れた。
いつもは遠慮でもしてたのか?という感じだった……。
僕はそのままソファーに横になっ
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