暗がりから見える景色。−序説

「じゃ帰るか。こんなすごい荷物になるなら俺が付いてきてやって、助かっただろ?」
駅前の雑踏の中、和真の声が聞こえてきた。

「まぁね」
聞いたことがない、女の子の声。

嫌な感じがして声が聞こえてきた方を見ると、荷物を持った和真と高校生くらいの女の子がいた。

もしかして、あれが妹かな?
少し雰囲気が和真に似てる感じがする。

外ではむっとしていることが多い和真が、その子といるためか優しい雰囲気をまとっていた。
きゅっと心臓を掴まれたような感じがした。

声をかけても良かったんだろうけど、和真から隠れながら二人の様子をうかがった。

「あっ瑞希 ちゃん!」という声が聞こえてきて、セミロングの子が小走りに二人のところに行った。

「香川さん!偶然だね!」
和真と一緒にいた女の子がそう言った。

「なんだ瑞希 、友達か?」
「うん、学校のお友達の香川さん」

はじめは二人きりのところを邪魔されてむっとしているような感じだったけど、
「香川さん、はじめまして。僕は瑞希の彼氏で和真といいます」
そう言って和真はドキっとする流し眼で微笑んだ。

「え!?」
香川というセミロングの子がびっくりしてた。
僕も驚いた。

妹じゃないのかな?
節操がないにも程がある……。

「あ〜、香川さん気にしないで。お兄ちゃんがまたバカな事言ってるだけだから」

やっぱり和真の妹なんだと思うと、ちょっと、ほっとした。

和真ってウソかホントかわからない冗談言うから……。
僕でも時々どこまで冗談なんだかわからなくなる。

でも、ホントに冗談なんだろうか?
和真だし……。

すっごく心配になってしまった。

それから香川って女の子と別れて、和真は妹に怒られながら行ってしまった。
でも、和真は嬉しそうだった。


それから和真の妹が本屋でバイトをしていることを知って、そのバイトに申し込んできた。

先のことは、あまり考えてなかった。
ただ、和真が僕より大事だって言う妹のことが知りたかった。
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