『―――それでは今日はここまでで』
「あの、先生」
『はい?何か分からないこととかありましたか?』
「いやそうではなくて…フィアンセのことなのだが」
『あ、先ほどの方ですか?もしかして秘密の話だったり…』
それは色々問題かも。いち、個人教授がそんなトップシークレットなこと聞いてしまったのだから
『大丈夫です!私口堅いですから!』
「せ、先生…それはみんな知ってることですから」
『え…!みなさん知ってるんですか…』
知らなかったのもしや私だけ?
「その……皇族にはフィアンセの候補がたくさんいるわけで、必ずその人たちと結婚するというわけではなくて」
『そうなんですか』
「だから…!勘違いしないでほしい!余は先生が―――」
その時、豪快に扉が開いた
「アルト!授業はもう終わったんでしょ?お茶しましょお茶!!」
「――――っ……フィーナ……」
『えと…それではまた来週来ますねアルト様』
「せ―――」
私は席を立つと、部屋を静かに出た
「ねぇアルト。私頑張ってソロレスをふりほどいたのよ!ねえアル―――」
「先生……」
「アルト……」
「教授」
『あっソロレスさん。って大丈夫ですか?』
なんだか服やら髪が乱れている気がするけど
「ええ、大丈夫です。それより教授は大丈夫ですか?」
『私ですか?別になんともないですけど』
「そうですか…安心しました。おのお方は少々元気過ぎるものですから」
ソロレスさんは何かを思い出したのか、少し表情がやつれた
なかなか表情を崩さないソロレスさんがこんな顔をするなんて相当すごい人なんだろうな
『あの、ソロレスさん』
私はポケットの中に入っていた茶葉をだした
『これ、リラックス効果とか疲労回復とかあるんですけど…良かったらどうぞ飲んでください』
「…よろしいのでしょうか」
『はい!もともとアルト様とソロレスさんと一緒にお茶でも出来たらいいなぁ思って持ってきたんですけど……個人教授がそんなこと失礼ですよね』
そういうと、ソロレスさんは茶葉を持っている私の手ごと包んだ
「失礼なことなんてありません。ありがとうございます。大切に飲ませて頂きます」
ソロレスさんは優しく微笑んだ
『ソロレスさん……』
部屋の中からソロレスさんの名前を呼ぶ声が聞こえた
『それでは、また舞踊習いにきますね』
「はい。お気をつけて」
私はソロレスさんに茶葉を渡すと、宮殿を後にした
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