雲ひとつない青い空。いわゆる晴天というべきか
『―――うーん…気持ちいい天気…』
私は空に向かって手を伸ばした
今日は休日のため、街に繰り出した
もちろん一人で
『きっと、エグザとか知ったら怒るだろうな』
危ないとか護衛をつけろとか
個人教授にはもったいなさすぎる話だし
『護身術ならヴォルクに教わってるもんね』
私は深呼吸をすると、賑やかな声が聞こえる街の中に歩き出した
『……少し派手すぎるかな?』
様々なアンティークを眺めながら、頭を抱える
『フィーナ様は、どういうのが好きなのかな?』
今フィーナ様と仲良くなるために、プレゼントを差し上げようと勢い込んだのはいいが(失礼なことをしたお詫びに)私は一切フィーナ様のことを知らなかった
『やっぱり何が好きなのか聞いてくれば良かったな』
その時、ふと肩を叩かれた
「お嬢さん、お一人ですか?」
『……っ!!』
私は勢いよく背後を振り返った。もちろん護身術の準備をしながら……けれど、そこには意外な人物が立っていた
『―――リ……!』
バッと口を押さえられた
「しーーっ。大声を出すな。せっかく女共から逃げてきたのを無駄にする気か」
(そんなこと知ってるわけないじゃない)
私は心の中で叫んだ
『もう…いきなりなんですか。びっくりしましたよ』
「当り前だ。驚かそうとしたんだからな」
この悪気のない態度……まぁいつものことだから気にしないけど
「…………」
『なんですか?じろじろと……』
「お前…一人か?」
『えっと、まぁ、はい』
「案じなくても、俺は誰かに言わんぞ」
不貞腐れたように、リオは言う
『……ふふっそうですね。失言でした』
「何が可笑しい…」
『いえ……リオらしいなって』
「…納得出来んな。よし。罰としてこれから俺はお前に付き合ってやる」
『えっ…?なんでそうなったんですか?それに罰なら普通、私がリオに付き合うのでは……?』
「俺が今決めた。文句を言うな」
『楽しくないですよ?女性物の小物とか見るだけですし……あとそれにお嫁さん候補は探さなくて……』
「文句は聞かんと言っただろうが、行くぞ」
『あっちょっと!リオ!』
「本当に女物なんだな」
『だから言ったじゃないですか、やっぱり帰ります?』
「いや、帰らん。お前を一人にすると危なっかしいからな」
『もしかして、私を心配して付いてきてくれてるんですか?大丈夫ですよ。ヴォルクに護身術は習っていますから』
「そういう問題じゃないんだがな……まぁいい。それにしてもさっきから店に入っては買わずじまいだが、何を探してるんだ?」
『フィーナ様に何か差し上げようと思ったんですけど、何がいいか決まらなくて』
「フィーナって……アルトの花嫁候補か?」
『はい。失礼なことしてしまいましたから、何かお詫びにしたいなって』
「フッ。お前らしいな。だが、あげる物ならアレに決まってるだろ」
『アレって何か知ってるんですか?』
「クッキーだ」
『クッキー…ですか。フィーナ様ってクッキーが好きなんですね』
「そうじゃない。お前が作ったクッキーをあげればいい。俺たちにくれたようにな。物を渡すより、手作りのクッキーの方が何倍にも嬉しいに決まってるだろうが」
『……喜んでくれるでしょうか?』
「当り前だ。お前のクッキーは……世界で一番美味いからな。形はともあれ」
『リオ……たまにはいいこと言いますね……』
「いつもの間違いだ」
『……ははっ!それじゃあ早速材料を買いに行きましょ』
「ああ。そうだな――――やはり、笑ってる顔が似合うな」
『リオー?何か言いましたー?』
「いや。俺の分も作るんだぞ」
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