『エグザったらね、ずっと、はい。しか言わないのよ?全然会話が成り立たなくて私笑っちゃった』
「フッ。エグザらしいな」
『本当、そんなかしこまらなくてもいいのに』
「仕方ないんじゃないか。雪凪殿と二人でお茶なんて誰だって緊張するものだろう」
『何それ、なんだか私が怖い人みたいじゃない』
「そういう意味じゃなくてだな…」
『んじゃヴォルク、どういう意味?』
「それは……だな」
『うん』
「教授と一緒だと、教授が可愛すぎて、胸がドキドキしちゃうからじゃない?」
「……っ!」
ヴォルクの後ろに現れたのは、ヴォルクの先輩イングリフさんだった
『あっイングリフさん!帰ってきたんですか?』
「いや、今日は隣の国の親衛隊とここの親衛隊とで合同訓練でね。それで一時ここに滞在することになったんだ」
『へーぇ…そうなんですか。それとさっきの話なんですか?』
「ああそれはね…」
「言わなくていいです」
「なんだい?せっかく代弁してやったのに」
『代弁って……あの話のことですか?』
「そうそれ」
「イングリフさん」
ヴォルクがイングリフさんを引っ張ると、私から少し距離をとった
「俺を呼びに来たんでしょ。余計なこと言わないでください」
「何言ってるんだ。教授を狙ってる男がたくさんいるのに、なかなかヴォルクが想いをとげないから手伝ってあげてるんじゃないか」
「ほっといてください」
『何の話してるんですか?』
「なんでもない」
「ちょっと訓練の話でね」
『あっもしかして合同練習ってことはヴォルクを呼びに来たんですよね。すいません。なんか引きとめていて』
「いえいえ、そんなことないですよ。ヴォルクだって好きでここにいたんですから」
『へ?』
「イングリフさん、後でちゃんと行くのでもう戻ってください」
「はいはい、それじゃまた後でね。―――ああそれと」
イングリフさんはヴォルクに近づくと、何か耳打ちした
「……いくら人の姿だからって、俺の気配に気づかないなんて教授に熱中し過ぎだ。それじゃ大切な人も守れないよ」
「なっ……」
「それじゃ、教授また」
『はい。今度武術のこと教えてくださいね』
手を振り返して見送ると、宮殿の中に入っていった
「はぁ、まったくあの人は」
『ねぇ…なんかちょいちょい私のこと見てたけど、本当に訓練の話?』
「…一応…」
『そう?じゃあヴォルク訓練頑張ってね』
「ああ、それと雪凪殿。武術をイングリフさんに教えてもらってるのか?
俺が教えてるのでは駄目なのか?」
『え?イングリフさんはいろんな国の武術とか実際見てることとかあるから色々教わるけど。別にヴォルクが駄目ってわけじゃないよ。あーでも今日の合同練習は気になるよね』
「そうか…なら今日の合同練習のことも教えられる範囲だけ教える」
『本当?ありがとう』
「それと、俺も一応親衛隊の中佐だ。いろんな国の武術だって知ってる」
『うん』
「だから…イングリフさんに聞かずに俺に聞いてほしいのだが…」
なんでイングリフさんに聞いちゃダメなんだろう?
あ、そうか
『分かったヴォルク!そんなにヴォルクが想ってたなんて…気づかなくてごめん』
「想ってたって…雪凪殿まさか…」
『うん。イングリフさんのことそんなに想ってたなんて…そうだよね!イングリフさんだって忙しいのに私邪魔して……今度からはヴォルクに聞くね』
「は?」
『あー話過ぎちゃた!ヴォルク急いで!訓練始まっちゃうよ!』
「あ…ああ…」
『じゃまたねヴォルク』
私は元気よくヴォルクに手を振った
「あーあ…あれは強敵だな。ヴォルクも大変だ」
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