「ソロレスって意外と大胆だよね」
宮殿から自室に渡る廊下を歩いてるときだった
柱の影に隠れて現れたのは
『レルム様。って見てたんですか?』
「うん。見てた。ソロレスがいやらしい顔してた」
『そんな顔してません。ソロレスさんをからかうのは良くないですよ』
「ちえっ」
『ふふっ。そういえば今日は邪魔しに来ませんでしたね。今来たんですか?』
「なんかその言い方ひどいなー。まぁいいけどさー。ずっといたよ。先生がアルトの授業してる時から」
『そんなに前からいらしたんですか、珍しいですね』
「あの女の匂いがしたから、隠れてたのさ」
『あの女?』
「もー鈍いなー。アルトの部屋に乱入してきた女。隣の国の王女で自分勝手だし我がままだし、その上威張ってて。レルムあいつ嫌い」
今……さりげなくすごいことを聞いてしまった
「んー?どうしたの先生?」
『お、王女様だったんですか……』
「あれ?知らなかったの先生?』
私は思わず持っていたカバンを落とした
『知らなかった……そうだよね……よーく考えたらアルト様の婚約者なんだから……』
「候補ね。候補」
『どうしよう……不躾な態度取ってなかったかな』
「どっちかっていうと向こうが不躾だったよ」
『ってレルム様、あの女って呼んじゃ駄目じゃないですか!』
「いいんだよ。だって年下だし、嫌いだから」
『そういう問題じゃないです!』
ああ駄目だ……私はなんてことを……私お二人の時間邪魔してたよ……
『今からでも謝ってきた方がいいかな?』
「だいじょーぶだって。それにほら」
ふいに手を引っ張られた
「個人教授辞めさせられたら、レルムが雇ってあげる」
すると手の甲に口づけを落とした
『れ、れれれ、レルム様!』
「あっははははは!先生はからかうとおもしろいな」
『からかわないでください!』
「じゃあ本気だったらいいの?」
『もし、そんなことが本当に起きたら、私は自国に帰ります』
「なんで?レルムの個人教授になればいいじゃん」
『それは駄目です。やめさせられて、じゃあ次とか思いたくないんです。せっかく呼んでいただいたのに役目も果たせず、未練がましく残っているなんてなんの解決にもならないですから』
「ふーん…」
『だから今度は反省するべき点はきちんと反省して、他国のことももっと学ぼうと思うんですよね』
「なんか難しくてよく分からない」
うっ…今すっごい力説したのに
「けど、レルムの個人教授が嫌なわけじゃないんでしょ」
『はい。別に嫌じゃないですよ。むしろそんな風に言ってもらって嬉しいですし、ありがとうございます』
「うん。ならいいや。あっでもやっぱヤダ」
『え?なんでですか?』
レルム様は庭園に出ると、私にむけ、手で銃の形をつくった
「もらうならやっぱり、お嫁さんの方がいいや」
バンっと言って、撃ったふりをする
「先生いつかレルムのお嫁さんになってねー」
『ははっ…はいはい』
そう言って手を振るとレルム様は林の中に消えていった
「あーあ……本気なのになー。あの返事じゃ、ちゃんと分かってないな」
[5]
戻る [6]
次へ
[7]
TOP [9]
目次