私達は一旦、近くのカフェへと入った
『で、説得というのは…』
「その前に、一杯お茶を頂いても?」
『ど、どうぞ』
「君も何か飲まれますか?」
『いえ、大丈夫です』
そう返すと、幸薄そうな男性・・・もといダリウスさんは忙しそうに頼んだ。
心なしか周囲を窺う様子が度々ある。
それを怪しげに見ていたせいか、突然謝りだした。
「す、すいません。突然話しかけた上に、喫茶店にまで連れだしてしまい・・・」
『・・・いえ。悪魔に捕まるのはよくあることなので。貴方もそうなんでしょう?』
ダリウスさんは驚いたように目を見開いた
「よ、よくお分かりに・・こんなみてくれなので悪魔って言ってもみなさん信じてくれませんがね」
その時丁度よくお茶が運ばれてきた
「恥ずかしながら事業が失敗しましてね」
『え?!』
突然の話に思わず声をあげてしまった。
「悪魔なんて商売上手に見えますが。中には駄目駄目で上手くいかないことだってあるんですよ」
お茶を一口飲むと自嘲的に笑った。
「それに私には特殊な能力ありませんからね。事業を失敗したのも、相手の取引先に訴えられてしまって。ですが!私たちは騙されたのです!やってもいないことを!それで法律事務所に行って、私達の無実を証明して頂こうと!」
『だからベルゼビュートの所に行かれたのですか?』
「はい・・・。何回もお願いには行ったのですが、全て追い返されてしまって」
『(まあ、あそこにはべリアルいるし。どんな犯罪者だろうが無罪にしちゃうからな)』
「そんな折に、貴方がベルゼビュートさんと親しく話をしているのを、よく御見かけしたものですから。貴方に頼めばなんとかなると」
『お話は分かりましたが、ベルゼビュートが私の話を聞いてくれるか分かりませんよ?私、もて遊ばれてるし・・・』
そういうと、さっきの悲痛めいた表情から今度は明るい表情にきり変わった。
「大丈夫です。貴方さえ手に入れば、全ては丸く収まりますから」
『は?』
すると突然、周りに座っていたお客さんが立ちあがった。
「これで全て解決だ」
『(嫌な感じがする)』
『あの、、私まだ配達があるので帰りま・・・』
いきなり口を誰かの手に塞がれた。
「返しませんよ。せっかくの切り札を」
『(やだ・・・誰か・・・)』
その時だった
耳を劈く音と共にお店の窓ガラスが全て割れた
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