バンっと、一枚の紙を叩きつけられた
何事かと思いながら、その紙に書いてある題名を読んだ
『……ブライダル?』
第三王子個人教授のシオンは訝しげ読んだ
『とうとう結婚なさるのですか?リオ』
リオと呼ばれた青年は小さくため息を溢した
「ちゃんと読め」
そう言われて再び視線を紙に戻した
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『結婚式のモデルを募集してるみたいですね。それで何か?』
「そこで働いてる友人に無理やり頼まれてな」
『あぁモデルをですか』
「そうだ」
『そうですか』
そう答えるとシオンはまだ途中だった論文を書き始めた
「おい!それだけか!」
『それだけって・・・勝手に部屋に入ってきて紙渡されて、これ以上何をすればいいかなんて分かりませんよ』
「だから・・・・・・だな」
『だから・・・なんですか?』
フーリオは視線を彷徨わせて、意を決したようにシオンを見た
「俺の女になれ!」
『はっ?』
思わずシオンはペンを落とす
第二王子にこんな態度は失礼だろうと思うが、そう反応せずにいられなかった
『頭でも打ったんですか?』
「頭など打ってない」
『じゃあいつもの冗談ですか?冗談にしては笑えませんけど』
「冗談で言ってるんじゃない。最近店の景気が悪いらしくてな。この美形の俺の写真を撮って客寄せにしようっていうの話なんだが、パートナーが必要で・・・だな・・・まぁ俺に釣り合う女はいないが、ぎりぎりのラインでお前で妥協してやる」
つまり、「客寄せのために協力しろ」遠まわしだがフーリオはそれが言いたかったのだ
『そういうのは最初に言うべきだと思いますけど、いろいろ省き過ぎです』
「フン。言っとくがお前に拒否権はないからな」
実にふてぶてしく、上から目線の命令口調。これはフーリオなりに頼んでいるのだとシオンは理解している
『わかりましたよ・・・私でよろしいのでしたらやります』
その返答に満足したのか、心なしか嬉しそうに見える
「そうこなくちゃっな」
協会風のスタジオで既に着替えを終えたフーリオは、緊張気味の面持ちだった
「リオ!お待たせ!あんたのお嫁さん、準備が終わったぜ!」
今回の依頼者の友人がリオの肩を叩く
「ばっ・・・嫁じゃない」
「照れなくたって大丈夫だって。いやーリオはあーゆう子がタイプなんだな」
「だがら違うと」
「まーま、それよりほら。彼女の登場だ」
友人が扉に視線を向ければ、ちょうどシオンが入ってくるところだった
「シオン・・・か?」
純白のドレスに身を包んだシオンがゆっくりとフーリオに近づく
『リオ?』
固まってしまったフーリオにシオンは頭を傾げる
当の本人はあまりにもシオンの美しさに、目を奪われていた
『さすがリオですね。タキシードすごい似合ってますよ』
シオンはふわっと笑う
「・・・っ!」
「おーおー照れてる照れてる」
「う、うるさい」
『それにしても、こんな高そうなドレス着て大丈夫ですか?なんだか私じゃ不釣合いな・・・』
「そんなことないですよ。すごく似合ってます。それにリオが連れてきた女性がまさかこんなに綺麗だとは思いませんでした」
『いや、綺麗だなんで全然!』
「謙遜なさらず。あっちょっと失礼・・・」
男性がシオンに近づき、触れようとした瞬間
「おい!触るな」
ばっとその手をリオが掴んだ
『ちょっとリオ何してるんですか?』
「あっいや…」
「ははーん。別に取って食わしねぇーぞ」
「別にこれは・・・」
「俺はリボンが歪んでるから直してあげようとしただけなんだけどな〜」
「なっ・・・」
『あっすいません。ありがとうございます』
「どういたしまして。それじゃ俺は機材の準備でもしてくるかな。嫉妬深いナイト様に怒られる前に」
友人はひらひらとリオに手を振ると、スタッフが集まっているところに戻った
「まったく・・・あいつは」
『ふふ。仲いいんですね』
「まぁ、あいつは俺を王子だと知っても普通に接してくれるからな」
『それは素敵な人
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