「雪凪殿!」
「わっ」
思った以上に大きな声が出たみたいで、雪凪殿は驚いた
「ヴォルクか・・・どうしたの?」
「『どうしたの?』と聞く割には何故後ずさる?」
「ははっつい反射で」
「最近、俺の事避けてないか?」
「そ、そんなことないよ」
「そんなことあるから言っているんだ。こんな風に話しかけると逃げて行かれるし、武術についても何も聞いてこないじゃないか」
「え、えっとね、最近ちょっと実験で忙しくて。じゃあまた明日!!」
「待ってくれ」
立ち去ろうとする雪凪殿の腕を掴む
「二ケ月半も掛かるほどの実験なのか?」
「う、うん!それほど大規模なの」
なんとか、俺から逃れようとする雪凪殿。
それが無性に腹立つ
「きゃっ?!」
気づけば、無意識に雪凪殿を抱きしめていた
「避けられるのは結構堪える」
「ヴォルク?」
「結婚するのか?」
腕の中で、微かに体が動いた
認めたくないが、これはきっと肯定を意味するのだろう。
「そうか・・・」
腕の中の彼女をそっと離す。
「幸せにな・・・」
俺はすぐさま背中を向けた。今の表情を誰にも見られたくない――
「へぇーヴォルクってそんな表情もするんだな」
「イ、イングリフ様?!」
「あーもー、最後の最後でヴォルクに邪魔されちゃった」
残念そうな声が後ろから聞こえる
「これは無効にしてみては?今日は最終日ですし」
「駄目です!実験は実験ですから!あんな風な表情目の当たりにしたら、本当の事言っちゃうしかないじゃないですか・・・。あーあ、だからヴォルクに会いたくなかったのに」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
俺は思わず頭を抱える。
俺の経験上、イングリフ様が関わるときはろくなことがない。
「ヴォルク、今失礼なこと思っただろう」
「実験データ書き直しだなー」
「雪凪殿・・・説明してくれない?」
「ん?あ、実はね――――」
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