昨晩――
「ねぇアルト。このドレス素敵だと思わない?アルトに会うために新調したのよ」
「ああ、素敵だと思うよ」
「でしょ?ふふっ」
「フィーナ・・・余はそろそろ寝たいのだが」
「あら。何を遠慮してるの?私たちは未来を約束された者同士なんだから、一緒の部屋で寝るのは当たり前でしょ」
「だから――それは父上が勝手に決めたことで・・・」
「ねぇアルト明日は一緒に庭園に行きましょうよ」
「はぁー・・・」
アルトはフィーナから視線を外すと窓の外を眺めた
「でね、そこで一緒にお茶して――あっソロレスに美味しいお菓子も用意してもらって・・・ね、アルト」
「・・・」
「アルト?」
アルトは窓の外に視線を向けたまま、フィーナの声が届いていない様子だった
おそる、おそる窓の外を覗くと、そこにはアルトの個人教授がいた
「あの人・・・どうしてこんな時間帯に」
ベンチに座って、月を眺めているその姿は、フィーナでさえ見とれるくらい綺麗だった
「先生・・・」
アルトの呟きが漏れる
その瞬間。フィーナの心に嫌な感情が溢れた
そして勢いよくカーテンを閉めた
「フィーナ・・・?」
「ははっ・・・もう眠いんでしょアルト?」
「ああ、だが・・・」
アルトはカーテンに触れようとした。しかし――
「アルトにはあんな女釣り合わないわよ!」
フィーナの声でその動作は止まった
「だって・・・私より可愛くないし、ただの個人教授だし、それに知ってるアルト?あの人色んな男の人に愛想を振りまいてるのよ」
「フィーナ」
「あ、あとね実はアルトのこと嫌いって言ってたし、きっとアルトを利用してこの国の財産を手に入れようとしてるんだわ」
「フィーナ!」
「ね。あの女のこと嫌いになったでしょ?」
「これ以上、先生を悪く言うのはやめてくれ。そうじゃなければ余は・・・」
アルトはフィーナと視線を合わせる
「フィーナのことを嫌いになってしまう」
「・・・っ」
フィーナの目に涙が溢れる
「そんなに、あの先生のことが好き・・・なの?」
「ああ――好きだ
先生が・・・好きなんだ」
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