「っ!!」
 突然口元を布らしきもので覆われた。
 (な、なに!?)
 混乱する間もなく鼻腔をツンとした、甘く深く焦げ臭い匂いが頭まで響き。意識はあっという間に深くへ落ちた。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・… 
 「……あ、れ…」
 (ここ、どこ?)
 重い瞼をゆっくりと開けると、辺りは薄暗く仄かに薄汚れたようなオレンジの光が部屋を満たしている。
 「…っ」
 体を動かそうとすると、チリッと鋭く小さな痛みが手首に走った。
 足は固定されてはいないが、手は強くしっかしとした紐できつく縛られていた。走った痛みはきっと意識を失っている間に動かしてついた傷を、さらにすったような痛みだった。
 「はぁ。オリアスの占い、当たっちゃったなぁ」 
 ―――今日は運勢が悪い。
 「でも、今日やることは無駄になる≠チて所は今のところ当たってないよね?」
 うんうんと、何故か冷静でいられる自分がいた。
 頭の中はとりあえず8割は冷静1割混乱していて残りは、活動停止中。
 「さて、と。ここはどこ?」
 冷静な自分と、たまにひょっこり頭を出す混乱している自分。
 「ああぁ……」
 っと、あることが頭をよぎった。…あまり、嬉しくないことが。
 「…キア。絶対、怒ってるよね。それに、心配…させちゃってるよね」
 はぁ…っと、大切な家族の悪魔のマルコキアスのことを思い出し憂鬱になった。
 「あああぁぁ……暇だ」
 さっきまでの心配事、憂鬱な気分はどこへやら。師匠に小さいころ、なぜか叩きこまれた1つの「縄抜け」でとっくの昔に手首をくくっていた紐を外していた。
 あれこれ色々と模索してみたものの、この部屋から出られる様子はなかった。
 「……うぅむ」
 (果たしていつまでこのままでいればいいのか)
 「キア、いつ迎えに来てくれるかなぁ」
 (そんなにはかからないと思うんだけどなぁ)  
	
		
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