仕事の都合でこの美浜に引っ越してきて、美浜市立高等学校への転入。
最初は慣れない土地、慣れない学校、初めてみる人たち。
もちろん戸惑いもあって、不安もあったけど。過ごしてみるととても住みやすくて、周りのクラスメイトたちも優しくて。すぐにここでの生活にも慣れ、充実した日々を送っていた。
入学して約一か月。静藍は陸上部に入部して、放課後はほぼ毎日部活動に専念していた。
「う〜ん。いいお天気」
静藍は女子更衣室でユニフォームに着替え、今日も一番乗りで運動場に向かい準備運動をしていた。
と、そこへ一年生の部活では先輩の神田巽君がやってきた。
「あ、先輩。こんちは。今日も早いですね」
「こんにちは、神田君」
言葉づかいは丁寧、物腰も柔らか、顔立ちも整っていて笑顔も柔らかくて離していてとても落ち着く。
「神田君は準備運動していて。私はもう終わったから、先にハードルとかの準備してるから」
「そんな、雅先輩1人になんて任せられませんよ。準備運動は走る前にすればいいですから、僕も手伝いますよ」
「大丈夫だよ。もう部活にも慣れてきたし、1人でも」
「そうかもしれませんが、いくら僕でも女性の先輩1人に力仕事は任せられません」
さらっとそんな事を素で言う神田に、天然な静藍もこれには少し頬を赤く染めた。
「じゃ、じゃあお願してもいい?」
「もちろん」
2人和気あいあいと談笑しながら倉庫へ向かい、部活の準備をしている。
陸上部の顧問は、保険医の宮原正顕先生。後は部員が1〜3年で10人ほどいるだけだ。
その中でも1年の神田君とは親しくなり、良く話をする間柄だ。
転入したて、入部したての時も優しく部活動のことを教えてくれて。後輩とは思えないほど落ち着いていて。最初から好感をもっていた。
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