「ルリ」
聴きなれた声に呼ばれて振り向けば、相変わらず無表情なオリアスが。
「あら、オリアス。こんにちは」
「ああ」
あの事件の日から3日後。香水の配達で外に出てきていた時、ちょうどオリアスと出くわした。
ちなみに昨日まで、一切家から出ていない。お店も開けていない。……いや、出られなかったし。開けれなかった。
――――キアの所為で。
事件の後、キアに抱き抱えられながら家に帰ったルリの傍にはずっとキアがいた。ご飯の時も、お風呂の時も(これは脱衣所の外の扉で待機)寝る時も部屋の外で寝ずに見張りを。
今まで以上に過保護で、ちょっと部屋を出るにも「どこに?」っと聞いてくる始末。勿論外に出してくれるはずもなく、お店を開けようとしても「危険です」の一点張りで。
今日だって、キアが電話にでている隙を狙って出てきたのだ。
きっと今頃血相を変えて探しているだろうと思えば胸も痛むし、キアがあんなに過保護になるのもわかるから罪悪感もあるけど。
でも、やっぱり外には出たいし。
「あの日、無事に帰れたか?」
「まあ、それなりに」
「そうか」
まさか「誘拐された」。なんて、オリアスの占いどおり…に当てはまる事柄が起こったことなんて、言いたくなかった。
(癪にさわるか……)
「君はこれからどこに行くんだ?」
「え?もう配達は終わったから、お店に帰るところだけど?」
普段よりも饒舌で、オリアスの方からルリの方から尋ねてくるなんて。
「そうか。なら、ちょうど良かった。ヴァラクが君を呼んでいた」
「ヴァラクが?」
「ああ」
「そう。じゃあ、寄って行こうかな」
ベルゼビュートの法律事務所の屋上庭園で、いつも1人。友達の爬虫類たちといるオリアスたちと同じ悪魔の男の子。
ものすごく可愛くて、きっと女装をすれば美少女にまること間違いなしの容姿で。もっと仲良くなったら、女装させて…せめて髪をいじってみたいなぁ。なんて考えている。
「変な事を考えていないで、早く行くぞ」
「え!っちょ、オリアうす!私の考え読んだの!?っていうか、読めたの!?」
焦って噛んでしまったが、そんなことは気にすることではない。
「君がそんな顔をしている時は、大抵ろくなことは考えていない」
ズバリと言い当てられ、口ごもるしかない。
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