「……煩い!!」
「………開口一番の台詞が、ソレか」
ぼそりと。だがしかし、よく通る声で紡がれた言葉は建物に響きルリの元まではっきりと届いた。
「はれ?ハーベンティ?」
轟音と立ち上る土煙りと、薄明るい光の中から現れたのは予想外の人物だった。
髪は一切乱れず、服装も整い皺やシミや汚れの1つも見えない。
……さすが、と言うべきなのだろうか。
「で、どうしてハーベンティがここにいるわけ?それも爆音付きで」
「ベルゼビュート様からの命だ」
「ベルゼがなんて?」
「貴女を助けてこい、と」
「ふう〜ん。爆発も?」
「…ほら、行きますよ。貴女の保護者も煩いですが、何よりベルゼ様も気になさっています。あの方の為にも早くここから帰りますよ」
「あ、ちょっと!ねえ、まだ爆発の方はどうなのよ!!」
ルリの質問には最初に少しの間を作っただけで、後は一向にとり合わない。無視を決め続けている。
そしてハーベンティについていき、ベルゼビュートの事務所まできた。
ヘーベンティが扉を開けると、そこには椅子に座って何やら書類を見ていたベルゼビュートがいた。開いた扉の所に自分の秘書と、ルリの姿を認め声をかけた。
「ああ、無事だったようだね」
「おかげ様で眠気も引っ込みました」
「?まあいい。無事なら。御苦労、ティー」
「いえ」
「それであなた、ハーベンティになにを言ったの?」
「なに、とは?」
書類を机に置き、両手を机の上に肘を立てて組んだ手の上に顎を載せながら面白そうに問いかける。その口調と、含みのある視線が苛立ちを覚えさせる。
「助け出される時、何故だが多大な爆発音がしたんですけど」
「ほう〜。それは何とも見事な演出だね」
「貴方の命ではないのね?」
「ああ。私はただ、お前を助けだしてくるように。としか言っていないのでね」
「そう。ならいいわ。貴方が命じたのであれば、文句の1つ。いえ、こぶしのつでもお見舞いしてやろうと思っていたから」
「おお、それは怖い怖い。そんなことでは、嫁のもらいてもなくなるよ?」
「結構。元から嫁に行く気などございませんから」
ベルゼビュートのからかいにも、ルリは取り合わない。
っと、そこへ何やらドタドタと煩い足音が聞こえてきた。そして突然勢いよく事務所の部屋の扉が開き、駆けこんできた。
「ルリ!」
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