小さき悪魔

 《法律事務所・屋上庭園》
 
 「こんにちは!ヴァラク。またお茶してるのね」
 テーブルの上には、綺麗なティーセットが並んでいる。
 ルリはオリアスについていき、そのままヴァラクがいつもいる悪魔であるベルゼビュートの法律事務所の屋上庭園に来ていた。
 「……ルリも飲む?」
 「うん!ありがとう」
 ヴァラクはベルゼビュートの事務所の屋上にある庭園でいつもお茶を飲んでいる。他の悪魔達と違って、人間と全然接触がないみたい。 
 魔達は一体、それぞれどういう目的でこの世界にいるんだろう…?
 「…えっ…?!」
 ふと椅子に着こうと移動した時。噴水の前で、ティーカップを持ったヴァラクの横に大きなワニが寝そべっている。ヴァラクの向こう側、今まさに紅茶を淹れている彼、ここまで連れてきたオリアスに視線を助け…視線を向けてみれば「黙ってろ」とでも言いたげな視線を投げ返してきた。
 「こ…この子もお友達なの?」
 「……嫌い?」
 思わずその迫力に気圧され、引け腰になってしまったが。それもヴァラクの寂しげな表情を見れば、幾分かマシになった。
 「ううん、ちょっとびっくりしただけだよ」
 「…そう」
 「触ってもいい?」
 「いいけど… 怖くないの?」
 「だって、ヴァラクのお友達でしょう?」
 「うん」
 ヴァラクは少しだけ笑っているようだ。ワニはとても大人しくしている。
 恐る恐る手を伸ばして触れてみれば、そのうろこはツルツルとしているがとても固い。ヘビ等とはやはり違うようだった。
 「思ってたより固いのね。でも、手触りはツルツル…」
 「そう、だね」
 思いもよらぬ珍客…ならぬ、ヴァラクの友人の登場には驚いたが。こちらが警戒しない限り向こうも敵意を見せない。
 まぁオリアスがそのままにしているということは、ヴァラクに対しての危険はないのだろう。悪魔だから何か爬虫類と通ずるものがあるのだろうか?偏見かもしれないが。


 そんなのんびりとした空間に無粋な客がやってきた。
11/01/04 12:39更新 / 久遠

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