「あ、店長!お疲れ様です」
私はペコリと頭を下げながら、店長にいつものように言った。店長は箒片手に笑みを浮かべて「真実ちゃんは今から?」と問いかけた。
「はい!じゃあ私…着替えてきますね?」
そう言って店長のもとを離れようとした時、店長がいきなり「あっ!」と何かを思い出したかのような声を上げた。
私は不思議そうな顔で振り返ってみると、店長が小走りで私のもとへと走ってきた。
「…?店長、どうかしたんですか?」
「そうそう!言い忘れてたんだけど…今日から新人がやってくるから」
「新人…ってバイトの、ですか?」
私は当たり前な事を聞いた。当たり前だ。バイトの新人じゃなきゃ何の新人だというのだろう。
店長は「うん」といつもと変わらない笑みを浮かべながら頷いた。
って事は…
「私が、先輩になるって…事ですよね?」
店長は少しの間、考えた後、また笑みを浮かべて「そうだね」と紡いだ。先輩…かぁ…女の子なのかな?
「年齢でいえば真実ちゃんより年上なんだけどね、うん、真実ちゃんが先輩になるのかな?」
「え…私より年上なんですか?」
「うん、真実ちゃんのお兄さんと同い年だよ…と、話をしていると…おおい、こっちだよ」
そう言って店長は手を振った。…お客様でも来たのだろうか…?と考えながら私は訝しげな表情で後ろを振り返るとそこには…
全然知らない男の人が息を切らしながら立っていた。
だ、誰ですか…?
その男の人は私に一礼した後、私の横に並んで、店長と話し始めた。って…なんで横に来るんだろう…別に…並ばなくてもいいんじゃないの?
「すみません、遅れました」
「いや、大丈夫だよ。あぁ…こちらの可愛らしい子が真実ちゃん。知ってるよね?」
「はい、僕と友人の妹ですから」
そう言って男の人は私に優しい笑みを浮かべた。私は訳の分からないまま一応会釈だけした。
「そうそう、岩崎君。一応、真実ちゃんが君の先輩だから…分からないことがあれば真実ちゃんに聞いてね」
「はい、分かりました」
…え?
私の思考は一瞬ショートしたがすぐに動き始めた。先輩…先輩って…ま・さ・か…?
「て、店長…まさか…新人って…?」
「勿論、真実ちゃんの隣に立っている岩崎君の事だよ」
やっぱり…
女の子だとずっと思いこんでいた私は肩をガックリと落としたが、隣に立っている岩崎さん(?)に笑みを浮かべた。
「こ、これから宜しくお願いします」
そう言うと岩崎さんも優しそうな笑みを浮かべて「宜しく」と言ってきた。
お兄ちゃんの同級生の岩崎さん(?)かぁ…今日帰ったらどんな人か聞いておこう…これからの参考になるように…
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