柳田君と数分話している間にも私の心の中のモヤモヤが消えるはずもなく…渦巻くばかりだった。
どうしてなんだろう?そんなの…自分の心に問いかけたって何一つ分からなかった。
「あ、もうこんな時間だ」
腕時計を確認した柳田君は少しだけ焦った表情になり、私に向き直った。
「岡崎も今日、バイトじゃなかったっけ?」
「あ!そうだった…」
「じゃあ時間ヤバいんじゃないか?」
そう言って柳田君は「ほら」と紡いで、私に腕時計を見せてきた。柳田君が自分の腕時計を見せるために私に近づいてきてくれた事が嬉しくて、恥ずかしくて、頬が紅潮していくのが分かった。
「…岡崎?顔赤いけど…熱でもあるのか?」
「え!?そ、そんなんじゃないの!心配しないで…!」
だけど柳田君は不安そうな、心配そうな顔をして私をずっと眺めている。だ…そんなに見られたら恥ずかしくて死んじゃう…っ!
「…やっぱり顔赤いよ。香川…呼んでくるよ」
「え?あ、大丈夫だよ!大丈夫だから…」
「でも…」とまだ心配してくれている柳田君を説得して、柳田君は後ろ髪を引かれているような顔でしぶしぶとバイトへと向かって行った。
私は、「ふぅ」とため息をついた後、手鏡を取り出した。
「うわ…顔赤すぎ…」
それは自分から見ても真っ赤だった。こんなに赤かったら熱でもあるんじゃないか…って心配する柳田君の心情がよく分かった。
心配、してくれた。ただそれだけでも…嬉しい。
なのに…
やっぱり胸のモヤモヤが晴れる事はなかった。
「…何が…嫌なの…?」
自分に問いかけた。やっぱり…返事が返ってくる事はなかった。私は手鏡を終い、足早でバイト先へと向かった。
頭の隅ではシュークリームの材料を思い浮かべながら…
[5]
戻る [6]
次へ
[7]
TOP [9]
目次