夕方。
店内には静かなクラシックが流れ、
あたたかな夕陽が差し込む。
そんな、穏やかな時間のカフェに―
“カランコロン”
「あ、いらっしゃいませ」
「こんにちは、卓哉くん」
彼女は、やってくる。
「あったかい紅茶をください」
そう言って、彼女はいつものお気に入りの席に座った。
夕陽の差し込む窓側の席。
彼女の栗色の髪が夕陽に照らされてきれいだった。
いつからだろうか。
彼女をこんなにも好きになったのは。
最初はただ、きれいな人だなあ…とそれだけだった。
でも、気づいたときには彼女が店に来る日を楽しみにしている自分がいた。
「どうぞ。今日はアールグレイにしてみました。
熱いので気をつけてくださいね 」
一口飲んだ彼女が急に顔を上げた。黒い大きな瞳が見つめる。
“ドクンッ”
胸の鼓動のリズムが速まる。かわいすぎて目をそらせない。
「卓也君の淹れる紅茶は本当に香りがよくておいしいよね!」
「えっ?あ…ありがとう…ございます。」
突然のことにおもわず動揺丸出しの声をだしてしまった。
彼女が言ったフレーズを頭の中で繰り返してみた。
やっと、ほめられたことに気づき急いで顔を背けた。
きっと今の自分の顔は夕陽にも負けないくらい赤いはずだ。
うれしさと恥ずかしさでいっぱいいっぱいだった。
「ふふっ……やっぱり好きだなぁ。卓也君のこと」
彼女が何か言ったように聞こえた。
「ん?えっ?今、何か言いましたか??あと、顔赤いですよ?」
「紅茶が好きって言ったーー!!」
彼女は笑っていた。優しくてあったかい笑顔だった。
「明日も来てくださいね。今日よりもっとおいしい紅茶淹れます」
「うん。楽しみにしてるね!」
明日、全部あなたに伝えるから
おれの気持ち
紅茶にそえて。
明日、全部君に伝えるから
私の気持ち。
『好きです』
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