最近、お兄ちゃんが何かヘンだ。
お兄ちゃんがヘンなのは、いつものことだけど……。
◇◇
夜中に暑くて目が覚めた……。
なんか、それで、寝れなくなってしまった。
冷えた麦茶なら、冷蔵庫にある。
冷蔵庫に行けば、少しでも涼めるかもしれない……。
と思って、部屋を出て台所に向かう。
玄関の前を通った時に、ガチャガチャと鍵が開けられる音がした。
え? 何?
ビビってると、ドアが開いて、お兄ちゃんが入ってきた。
静かだと思ったら、いなかったんだ。ってか、今、何時?
「……お帰りなさい」
とりあえず、そう言っていた。
「瑞希?」
お兄ちゃんがすごく驚いたような顔をしていた。
「何してるんだ?」
そう言って、お兄ちゃんがすごんだ。
……なんでそこですごむ?
何かしたっけ?
自分の行動を思い返してみたけど、お兄ちゃんにそんな顔をされるようなことはしてない。
「冷蔵庫で涼もうと思ってたんだけど」
……でも、お兄ちゃんだからな。
どこが地雷なのか、わかりづらい。
「そんな涼み方するんじゃない。逆に暑くなるぞ」
やっぱりトゲトゲとお兄ちゃんは言った。
「そうなの?」
「冷やすために、熱が出るんだ」
「じゃ、麦茶だけにしよっと。お兄ちゃんもいる?」
ご機嫌を取るつもりでそう言った。
「いらない……」
あれ?
いつものお兄ちゃんなら『いる』と答えるはずだった。
いつもなら、そんなことを聞かれなくても私の後をついてきて、ごちゃごちゃと今日は何があったのかとかくだらないことを聞いてくると思ってたのに。
そうなるものと思って、うざいって思ってたのに。
わたしはお兄ちゃんを見た。
「なんだ?」
お兄ちゃんが、ギクっとしたように言った。
なんか、おかしい。
「わたしに何か、隠してない?」
「え?! な、何をだ? いや、隠してないぞ」
お兄ちゃんが慌てふためいていた。
「もう遅いんだから、寝ろ。明日も学校があるだろう?」
そう言って、逃げるようにお兄ちゃんは自分の部屋に行ってしまった。
お兄ちゃんが、わたしから逃げた…………。
ってか、もう夏休みなんだけど。
わたしのスケジュールを熟知しているはずのお兄ちゃんがそんなことを言うなんて、やっぱりヘンだ。
でも、ウザくないお兄ちゃんって、なんかカッコいいかも。
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