マンションに帰ると、いつものようにリビングに和真がいた。
「ただいま」
和真は返事もせずに、ジロっと僕を見た。
……機嫌が悪いみたいだ。
ため息をついて、荷物を勉強用の部屋に持っていく。
すると、和真がついてきた。
無言で後ろにいられても……。
「すぐ行くからリビングで待っててよ。ご飯まだだよね?食事、作るし」
振り返ってそう言う。
「食った」
むっとした顔で和真は言った。
「そんなこと言われても、僕、まだ食べてないんだけど」
和真は無表情でそこに立っていた。
あ〜めんどくさいなぁ、もう。
と、思いつつ、和真にキスしようとした。
腕を掴まれて、廊下の壁に押し付けられる。
「痛っ!」
和真がおっかない顔で睨みつけている。
「ここでするの?ソファーかベッドの方がいいな」
「お前は……」
和真が押さえている腕に力が入った。
「痛いよ」
痛みから逃げようとしてずるずると座りこむ。
手を外してくれそうになかった。
「お前は、誰にでもそうだ」
「何が?」
「誰にでも、笑顔で接して……」
腕が絞められて、顔をしかめる。
「求められたら、誰とでも寝るのか?」
「……何のこと?」
「お前、昼間会った時、なんかおかしかっただろ」
ちょっとドキっとした。
桜井さんと柳田くんがクラスメートということは、なんとかして知られずにいなければならない。
僕としても、あの二人がうまく行ってくれたら、ちょっと安心できるかなってとこ、あるし。
「おかしくなんかないよ。フツーだよ」
そらしていた顔を、和真の方に向けさせられる。
「なんか、ヘンだ」
またあの顔。
何を言っても聞きそうにない顔。
「和真の方がヘンだよ」
目をそらそうとすると、抑えつけられてキスしてきた。
「やめて」
「うるさい」
そのまま服を脱がされた。
……別に、いいんだけどさ。
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