「ここ……で?」
視線を外し、恥ずかしそうにマリアンヌ殿が言った。
「イヤか?」
「ん……、別に、イヤじゃないけど……」
マリアンヌ殿が、熱を帯びた眼でこっちを見た。
それが、すごく、綺麗だと思った。
「でもさ、ココ、元牢獄だよ」
「……………………」
今、それを言うか?
「ここに連れてきたのは、マリアンヌ殿だろう?」
気分、落ち込むっていうか……。
やる気なくすっていうか……。
「私は、ヴォルクが姿のコントロールできるようになればいいなって思ってて、ここなら最適ですよって、イングリフさんに言われたから、あぁ、なるほどって思ったのよ」
何がなるほどなんだ?
マリアンヌ殿は、何を考えて、ここに俺を連れてきたんだ?
「まさか、ヴォルクがこんなこと、ココでするとは思ってなかったし」
……まさかって、何だ?
マリアンヌ殿が、俺から誘ってくれないって言ったから、だから、俺は……。
今まで、我慢してたんだぞ……。
「わかった……」
俺はマリアンヌ殿から離れて、すぐ横に座って、後ろを向いて横になった。
ホントはそこから離れて走り去りたいところだったが、手足はつながれているし、俺がいるのは鍵のかかった牢獄だ……。
もう、知るか……。
「……怒った?」
マリアンヌ殿が、俺の前にやってきてしゃがみこんで俺の顔を覗き込んできた。
そのしぐさは愛らしかったのだが、向きを変えて、マリアンヌ殿に背を向ける。
もうぜったいに、ごまかされない。
「ウソだよ」
マリアンヌ殿が、そう言って俺を仰向けにして、俺の上に乗ってきた。
いつもと違うアングルのマリアンヌ殿に驚いた。
そして、マリアンヌ殿がキスしてきた。
「どこでもしてあげるよ」
綺麗な顔で、マリアンヌ殿は笑った。
「え……」
「今日はヴォルクが下ね」
いつもの無邪気な彼女から、急に変わった……。
どうして彼女が、自分の恋人なんだろうと思う時もある。
でも、彼女を、誰にも渡したくない。
……たとえどんなヘンタイだとしても。
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