大会当日。
今日まで、俺はできるだけ“先輩”を避けてきた。
・・・・・つもり。
けど、“先輩”は普通に喋りかけてくるから、避けたくても無理だった。
「先輩、頑張ってくださいね。僕、応援してますから」
「ありがと、神田くん。
終わったら神田くんの方見に行けたら行くからね!」
そんなことを目の前で話してる2人。
あとちょっとで“先輩”の番だ。
「じゃあ行くね。
千葉君も頑張ってね!」
「・・・・あぁ・・・」
なんて言ったらいいのか分からず、俺は目をそらしてそう答えた。
“先輩”が去った後、神田が俺に話しかけてくる。
「先輩ならきっと1位とれるよな」
「・・・さあ・・・」
「千葉、なんかおかしいぞ?
どうしたんだよ」
やっぱり、神田はなんでもお見通し。
でも本当のことは言えないしな。
「ふつーだよ。俺、あっちで休んでくるな」
そう言うと、神田は“先輩”の走りを見に行ったみたいだ。
俺は、休憩しようと思った。
けど足だけは“先輩”の方へと向かう。
その瞬間、少し離れたところで“先輩”が走っていくのが見えた。
・・・やっぱり、1位をとったらしい。
さて、次は俺だ。
神田もそうだから、たぶん“先輩”は神田の方を見に行くだろうな。
走り終えると、“先輩”が来た。
「千葉くん!見てたよ、凄かったね〜!」
・・・見てた?
神田じゃなくて、俺の方を見に来てくれたのか?
「・・・アンタも、凄かったじゃん」
「え?私の見ててくれたの?」
・・・やば・・・。
「たまたまだよ・・・」
心臓が、破裂しそう。
やっぱり、コイツはむかつく。
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