日常 〜藺の1日〜


「はい!これあげる!」

ばっと目の前に差し出された小瓶に、
・・・? と 無言のまま首をかしげる。


「お仕事、大変なんでしょ?
 寝てないって聞いたから・・・・」


あぁ、そうか。

この小瓶は、お前なりの気遣い。
口下手で、弱音なんかはけないオレなんかのために、

こんな――・・・・


きゅぽん・・・っ


           ふわぁ――・・・っ


「作ってくれたのは流香だけどねっ」


そう言って笑う顔が、どこか儚げで・・・


落ち着いた樹木の香りが、部屋中をつつむ
その笑顔と声が、頭から離れなくて・・・・・



  ・・・・からんっ


「・・・?」

小瓶の中には、翡翠色のビー玉のような石が入っていた。


「確か、マラカイト・・だったか?」

以前、彼女が言っていた、不思議な力のある石。

「ストレスを和らげて、精神を安定させてくれるんだって!」


彼女の本職は、いったい何なのだろうか・・・
嗅覚が鋭く、香りの知識は豊富。
それにくわえ、パワーストーンまで操るというのか・・・


「・・・今度あったら、飯でも誘うか。」


そんな呟きがあったことを、美羽は知らない――・・・・




しかし、藺も気づいていなかった。

マラカイトに、「りゅうきんか」の花が刻まれていたことに。



花言葉は、「きっとくる幸福」――・・・・



11/04/19 21:08更新 / ろぃ
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