「はい!これあげる!」
ばっと目の前に差し出された小瓶に、
・・・? と 無言のまま首をかしげる。
「お仕事、大変なんでしょ?
寝てないって聞いたから・・・・」
あぁ、そうか。
この小瓶は、お前なりの気遣い。
口下手で、弱音なんかはけないオレなんかのために、
こんな――・・・・
きゅぽん・・・っ
ふわぁ――・・・っ
「作ってくれたのは流香だけどねっ」
そう言って笑う顔が、どこか儚げで・・・
落ち着いた樹木の香りが、部屋中をつつむ
その笑顔と声が、頭から離れなくて・・・・・
・・・・からんっ
「・・・?」
小瓶の中には、翡翠色のビー玉のような石が入っていた。
「確か、マラカイト・・だったか?」
以前、彼女が言っていた、不思議な力のある石。
「ストレスを和らげて、精神を安定させてくれるんだって!」
彼女の本職は、いったい何なのだろうか・・・
嗅覚が鋭く、香りの知識は豊富。
それにくわえ、パワーストーンまで操るというのか・・・
「・・・今度あったら、飯でも誘うか。」
そんな呟きがあったことを、美羽は知らない――・・・・
しかし、藺も気づいていなかった。
マラカイトに、「りゅうきんか」の花が刻まれていたことに。
花言葉は、「きっとくる幸福」――・・・・
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