「第62回、卒業式を――・・・
かったるいアナウンス、 変に重い空気・・・
どうもこういう行事は嫌いだ。
それに、この卒業式は・・・・ あの人がいってしまうから――・・・
「千葉ぁー?おまえ、この後どうする?」
「あ?」
ツレの声も、耳に入らない。
無意識の内に、あのひとの姿を追っていた。
「俺はいいわ、じゃーな」
ガラでもなく、校舎に残って あの人の面影をたどろうと、
知らぬ間に足は、あのひとの教室に向かっていた――・・・
「(誰かいる・・・あれは―・・・)」
「ち、ばくん・・・・だよね?」
ずっと聞きたかった声――・・・
俺の名前が紡がれる・・・
「卒業、だね・・・今まで、ありがとう」
俺だけに向けられた、
儚げで壊れてしまいそうな笑顔――・・・
上手く言葉に出来なくて、そのまま背を向けて教室を出ようとしたとき
「待って」
くん と 袖を引かれて立ち止まった。
「わたし、今日卒業なんだよ?
千葉君から、まだ何も聞いてない・・・」
顔を見れない。
・・・オレが振り返れないから。
「千葉君・・・」
言葉に出来ない。
・・・だって知っているから・・・・
俺の気持ちも
あんたの立場も――・・・・
「別にねーよ。」
「千葉君!!!」
引き止められていた、か細い指を払い、
オレは振り向かずにその場を去った。
きっと泣いてる。
泣かせたのはオレだ・・・・
「(言えるかよ・・・バカやろーが・・・!!)」
気づかなきゃよかった・・・
こんな気持ちになるぐらいなら・・・
知らなきゃよかった・・・
あんたとアイツの関係なんか・・・・
「好き、だ・・・っ」
その呟きは、誰にも聞こえる事無く、春の風に消された―――・・・・
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