読切小説
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、ごめんね・・・でも

「今日からよろしくお願いします!」

がばっと頭を下げたときに、
流れた黒髪から ふわり と 優しい香りがした

「ミーシャです、初めまして」

にこ、と笑うその笑顔に
オレのことを恐れているとか、そんな様子は
少しも感じられなかった



・・・・、面白い、人だな

ーーーーー

「ヴォルク、だ」

低めの声、射抜くような瞳、
しかしなにより、その姿は獣そのもの


「分からないことがあれば、なんなりと聞いてくれ」

でも、口調は柔らかくて、
迷ったような微笑は、ひどく、儚げに思えた


・・・・、不思議な、人、だな


ーーーーー

ここに住みはじめて、一緒に居るようになって、
色々と分かったことがある


「あ、おはよー ヴォルク!」

「あぁ、おはよう。・・・、なにをしているのだ、ミーシャ殿?」


ミーシャの手には、じょうろ
その視線の先には、可愛らしい花があった


「あぁ、これ? これはね セントポーリア だよ」

水をやりながら、その花の説明をしてくれたミーシャは、
やはり教授であり、とても物知りだった。


「花言葉は、 小さな愛  」――・・・・


そのときの、優しげな笑顔を、
オレは、きっと一生忘れないだろう


「ふむ、ではいつも身につけている、その水晶のようなものはなんだ?」

首元には、鈍く光るネックレスがあった


「ぇ、あ、うーんとね、・・・・お守りだよ、
 名前は アイオライド

         片思いの恋を 実らせてくれますように って」


切なげに、睫毛をふせたその瞳から
自分の想いがばれてしまわないかと、少し、声が震えた


「・・・・、そうか」


そう言ったあなたは、 ふい とそっぽをむいて
どこかへ行ってしまうから――・・・


ーーーーー

いつからだろう、・・・


考えるのは、あの人のことばかり

どうしてだろう、・・・


思えば、想うほど 胸が苦しくなって切ない


「「好き、なんだよ・・・・っ」」


思いは、言葉は、決して、相手に聞こえることはなくて――・・・・


ーーーーー

そんなある日、2人は一緒にでかけた

雪がちらつく12月、今日は聖なる夜「クリスマス」



「、さむ・・・っ」

ぶるっ と小さく肩を震わせたその体を
抱きしめることができたら、どんなにいいだろう

「大丈夫か?」

そっ と伸ばされた手に
自分の手を絡めることができたら、どんなにいいだろう


もうすぐ、25日が終わろうとしていた――・・・


「ぁ、「あの・・・っ!」、!!」

口を開いたのは、ミーシャだった


「これ、クリスマスプレゼントに・・・」

おずおずと差し出された、きれいにラッピングされたその箱は、
小さかったのだが、とても、想(おも)かった

嬉しくて、言葉にできずにいると、
ミーシャが、さらに言葉を続ける


「あの、ね 私の話、聞いてくれる?」

「いや、「!?Σ」・・・オレから言わせてくれないか?」


「ぇ――・・・?」



今まで、ずっと秘めてきた想い
君になら いや、 君だから 伝えたい・・・!


「ミーシャ殿、・・・・好きだ」


「ぁ・・・・」


その言葉は、ずっと、ずっと望んできたもので、
でも、 諦めていた言葉でもあった


「オレと、一緒に生きてはくれないか?」


そういって、差し出された箱は、
ミーシャのものよりも小さかった。

中に光るのは、 アメシスト をうめこんだ指輪


アメシストの意味は 「真実の愛」―――・・・・



俯き、ずっと黙ったままのミーシャだったが、
ぱっと顔をあげて、そのままヴォルクに抱きついた


「ありがとう、ヴォルク! 私も、あなたのことが大好きよ!!」


抱きしめられた腕から、そのぬくもりが伝わる


零れ落ちそうな涙は、幸せの欠片


弾けんばかりの笑顔は、その言葉を真実だと教えてくれた



「ね、ヴォルク、私からのプレゼント、開けてみて?」


中には、ヴォルクも見たことがない花があった。


「これはね いわしょうぶ よ   花言葉は・・・、



         私は 君のもの  」――――・・・・・



ごめんね、ここまでくるのに、すごく時間がかかっちゃった


ありがとう、私を愛してくれて


これからは、うぅん、これからも ずっと 傍に居てね――・・・・






11/05/05 19:17更新 / ろぃ

■作者メッセージ

もう5月なのに、
告白は12月かい!!Σ

さて、いかがだったでしょーか?


やっぱり、私は、こうゆう
ふわふわで、あったかくて、優しい話がすきです。

こういう作品を、
これからも書いて行きたいと思います。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

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