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もうひとつの家族

ミケ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 セルトママの憂鬱
  • 02 イナちゃんの発見
  • 03 モルガンさんの助言
  • 04 休憩挿話 〜ケスタロージャさんの相談〜
  • 05 のろのろと始まり
  • 06 どたどたと進み
  • 07 せかせかと向かい
  • 08 にこにこと終わる
  • 09 閉幕挿話〜すやすやと眠る〜
  • セルトママの憂鬱

    下宿兼バールでバリスタとして働いているセルトには、
    最近気になること、もとい心配事があった。

    「おはよーセルトママ!今日も良い天気だね!」

    「誰がママだ。‥‥‥朝ごはん出来てるぞ。」

    「ありがと!わぁ、今日も美味しそう!!いただきまーす!」

    「あ、兄貴‥‥‥おはよう。」

    「え、ミルズさん?!お、おはようございます。」

    「おはよう、二人とも。」

    若干眠たそうに目を瞬かせながらも、階段を下りてきたミルズさんは、
    にっこり笑顔で、先に起きていた二人に挨拶をする。
    それを見た目の前の少女は、見る見るうちに頬を染めて、
    嬉しそうに表情を緩めながら、自身の朝食に視線を落とした。

    そう、セルトの心配事というのは、下宿人であるこの少女のことなのだ。
    まだ学生である彼女は、もちろんの事ながらセルトよりも年下なわけで、
    見ていて危なっかしいところもあるが、
    明るく天真爛漫で、一言で言えばとても”良い子”なのである。
    そんな彼女が、最近セルトの兄であるミルズと言葉を交わすたびにこの反応。
    気付きたくもなかったが、こうまであからさまな反応をされては、
    止めろと言われても、気付かないほうが無理だ。
    どうやら少女は、ミルズのことが好きなようなのだ。
    こう見えて何かと世話焼きのセルトは、気付いてしまったからには放って置けない。
    とっても損な‥‥‥優しい性格なのです。

    低血圧なのかどうなのか、朝食は摂らない事が多いミルズさんは、
    セルトがいつものように差し出した極上のコーヒーを一杯だけ飲むと、
    朝刊を手に、また二階へと上がっていった。
    それを見たこの少女、なんともホッとしたような、残念そうな、
    見ているこっちがもどかしい表情をするときた。

    「お前、兄貴に告白しないのか?」

    「え、ええぇ?な、何で私が?」

    背中が痒くなりそうなセルトは、とりあえずストレートに聞いてみる事にしたわけだが。
    案の定、聞かれた少女は、驚き半分焦り半分の非常に分かり易い反応をしてくれる。

    「だってお前、兄貴のこと好きだろ。」

    「??!す、好きって‥‥‥え、えっと?」

    「違うのか?」

    「う、うーん‥‥ミルズさんの事見ると、ドキドキしたり焦ったりするだけだよ?」

    ‥‥‥この子は”鈍感さ”というものを病院か何処かで、
    大幅に削り落として貰ってきた方が良いかも知れない、本当に。
    鈍いくせに何て厄介な恋をしているんだと、既に頭痛を覚えていたセルトに、
    『だからセルトは勘違いしてるよ。』という、少女の追い討ちの言葉。

    「あ、そろそろ学校行かなきゃ!行ってきます!」

    「あぁ、遅くなるなよ。」

    「はーい!」

    今日も元気にバールのドアを開けっ放しにして駆けていく背中に、溜息一つ。
    こうして、世話焼きなお母さん体質が故に、厄介事に巻き込まれたセルトは、
    こういうことには鈍感な兄に代わって、真剣に頭を抱える羽目になったのでした。



    つづく!

    10/11/21 22:29 ミケ   

    ■作者メッセージ
    苦労性っぽいセルトさんが好きです。
    セルトに属性をつけるとしたら、ママ属性だと思います。
    なんだかんだで仲の良い留学編メンバーに乾杯!

    この後もお付き合いいただければ幸いです。
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