連載小説
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異変
クシュン!

自分の声で目が覚めた

頭もとでは雛がピーチクパーチク
鳴いていた

正直言ってうるさい

黙らせようと
昨日のうちにとっていたミミズを与えてやった

今になって考えると
自分が何故このような事をしているのかが
わからない

オレが考えるより先に動くなんてことは
まず今までなかった

ましてや生き物に関心を示すなんてことは
なかったはずだ

自分の中で何かが変わってきている…
そんな気がした

いや
たぶん
「もったいない」とでも思ったのだろう

あの時イリス様は
大方雛が落ちていたか何かで巣に戻してやった
…というとこだろう

まあ
あくまで推測に過ぎないが

もしかしたらただ雛を近くで見ていて
落ちただけなのかもしれない

何にせよ
愛でる者がいるのにそれを失くすのが
惜しいと考えるようになったオレは
やっぱり昔とは変わったのかもしれないな

そんなことを考えながら
湿ったままの服をすっかり着終えると
雛の鳴き声がまたうるさく感じるようになった

昨日の様子だと
まだ今日も
雨風共に続いているだろう

昨日のうちにプランターや植木鉢で育てているものは
許可を取って屋内に移したが
そうでないものはまだ残っている

今日は花壇を掘り起こすか

そう今日の計画を練っていると
朝食が届けられた

今朝は
レタスの葉が無かった

泥まみれになりながら
大体の花を移し変えていると
汗をかいてきた

まだ夏にはならないが雨も蒸し暑かった
…風はとても冷たかった

季節が近づいてきたのかと思ったが
そうではないらしい

雨も風も昨日よりかは弱まってはいたが
やっぱりまだ
強かった

プランターのある限り
移し変えて屋内に運んでいたが
もうプランターは無くなってしまった

途中
雛たちにミミズを与えに地下に戻りながらも
2日に渡って休まず仕事をしていたが
一向に雨は止まなかった

残りに出来る限りビニールを張っていき
どうにか最後までやり遂げると
不意に力が抜けた

空はいつの間にか晴れていて
太陽がサンサンと照っていた

とても暑かった

汗を掻き
同時にとても寒かった

耳にはずっとノイズが流れていた


…少し何かがおかしかった
11/04/16 10:25更新 /
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