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月夜のまやかし  番外編

番外編



『はあ……』



「どうしたんですか?さっきから溜息ばかりですね」




雪凪が振り向くと、そこにはイングリフが立っていた



『イ、イングリフさんいつの間に……』



「おや、気づいていなかったんですか?さっきから後ろにいましたよ」



そう言って人懐っこい笑顔を浮かべた



『(…さすがイングリフさん…気配なくして背後に立つなんて…)』



「そういえば最近、ヴォルクと会ってないみたいですね」



『(ぎくっ…!)―――な、な、なななな、なんでそんなこと…』



「最近…機嫌が悪いみたいで、隊士達の稽古が厳しくなってるんですよ。原因はあなたがヴォルクを避けてるからではないかと」




………だってそれは!



雪凪はこの間のことを思い出した



今でも残るキスの感覚











宮中廊下―――










『もう…なんでイングリフさんは意地悪なことばっか言うのかな』






―――――「とりあえずヴォルクの機嫌を直してくださいね。じゃないと隊士が減っちゃいますから」







『……機嫌が悪いって……それ私のせい?』




ふと視線を前に戻すと、前からヴォルクがやってきた




『(どうしよう!こんな時にヴォルクと会うなんて!)』




「…雪凪殿」



――――ああ…久々に名前を呼ばれた




『ヴォ、ヴォルク久しぶりね!えと…その…』



「良かった」



『え?』



「いつの間にか嫌われていたみたいだったからな。こうやってまた話せてよかった」



ヴォルクは悲しげな瞳で笑った





『そんな!嫌ってなんかいないよ…私がヴォルクを嫌いになれるわけ…』



最後まで言い切らぬうちに、ヴォルクはいきなり雪凪を抱きしめた




「温かいな…」


『ヴォルク?』


「本当はあの晩…酔ってなんかいなかった」


『(―――え…?)』


「雪凪殿が笑顔が愛しくて、酔いのせいにしてキスをした」




抱きしめる腕が強くなる








「そのせいで避けられていたのも分かった。すべては自分の責任だ。
分かっていた…分かっていたが…俺は、雪凪殿にずっと会いたかった」























「好きだ」












あぁ―――ずるい人…いつも私の心を奪っていく









『……ごめんねヴォルク……』




雪凪の言葉にヴォルクの肩が震える





「雪凪殿……やっぱり……」



『私……知らないうちにヴォルクのこと…こんなに好きになってたなんて……』






溢れだす涙が止まらない





『ヴォルクのことが……好きです……』








遠くで―――夜を告げる鐘が聞こえた







二人は体を離すと、視線を合わせる






まやかしではない




本物の





優しい口づけを二人は交わした









END

12/02/20 23:22更新 / nayo

■作者メッセージ

うわー!


番外編を書きました
今更ですいません!


コメントありがとうございます!
とても感謝です!
そして遅くなってすいません

こんな二人の終わり方になってしまいましたが大丈夫でしたでしょうか?


ここまで呼んでくださった方々に感謝を。

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