連載小説
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すごいね。
「イリス…様?」

「お二方ともお初見ではない様でありますが…?」

少佐は驚いているようだった

「うん!前に庭園をお散歩してたときに会ったんだよ!ね?シュイエ!」

「あ、は、はい…」

イリス…
どこかで聞いたことがあると思ったら…

「まあそんなことより速くお花を飾ってちょうだい!」

嬉しそうにイリス様はオレを急かす

「し、失礼しました!」

オレは急いで花を取り替えはじめた

「いつもきれいな花を届けてくれる人は
 誰なんだろうって思ってたんだあ
 それであなたをよんだの
 もしかしたらシュイエかもって予想しながらね」

「はあ…」

水を入れ替え
邪魔な葉を切り取り
見栄えのいいように花を飾りながら生返事をする

教授の部屋はオレの入ったことのある部屋の
どこよりも広かった

それほどまでに素晴らしい教授なのかと
ぼんやり思った

まあオレの世界が狭いだけなのかもしれないが…

そんなことを考えながら
全てやり終えると
教授の方に向き直った

「それでやっぱりシュイエだったってことは
 庭師ってシュイエしかいないの?」

「…はい」

「ええ〜!?こんなに大きな庭園なのに
 一人で全部の植物の世話をしてるんだ?すごいね!シュイエ!」

すごい…?

「いえ、そんなことは…ない…です…」

「イリス殿、そろそろ仕度をなさいませんと…」

少佐が話を中断しイリス様に呼びかける

「あ!いっけない!アルト様の授業の準備をしないと!
 エグザ!頼んでた資料はどこ!?」

「こちらです」

少佐は相変わらずしっかりしていた

「用は済んだ。下がって良いぞ」

少佐はオレに近づいて静かに言った

気遣っているのか?
…ということは
やはりイリス様は知らないのか…

「…はい、失礼しました」

処理をした葉や茎が
カーペットに落ちないように
気をつけて外に出た

もう人の話し声が聞こえ始めていた

来た時と同じように裏から出る
しかし来たときと違って
多くの人とすれ違った

若干居心地が悪い

しかしそれよりも
オレの頭に残る
言葉があった


…褒められたのは初めてだった
11/07/19 21:45更新 /
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