連載小説
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個人教授
月下美人が咲き始めた頃

中尉がオレの所に来られた

「おい、庭園師」
「はい…なんでしょう?」
「いつも屋敷に飾る花だがな、ガラスの間までの出入りが許可された」

そんな所まで!?
…いったい何故?

「なんでも、教授殿が直接お前にお会いしたいそうだ」
「はあ…」
「くれぐれも失礼がないよう、用が済んだらすぐに退出するように。わかったか!」
「は、はい!」

中尉は立ち去る際にとても不服そうな顔をしていた

それにしても
オレのような奴に会いたいとは
いったいどんな物好きなのだろうか

…あるいはオレ達のことを知らないのか


翌日

早朝に宮殿の中を回り
順に花を飾っていった

もちろん
とても高貴な方がおられる場所などには
自分では飾ることが出来ない

最後にガラスの間に入る

奥にある一番大きな客室の横にある
控え室のドアをノックする

この頃にはもう太陽が顔を出し始めていた

ドアが開くと少佐が顔を出した

「庭園師か…教授はまだおやすみだ。起床時間までここで待ちなさい」
「…よろしいのですか?」

たずねると
少佐は無言で部屋に招き入れてくれた

少佐にお会いするのは久しぶりだ
…そういえば少佐がこのような格好でいるのははじめて見た

少佐はテーブルクロスを用意し
控え室から直接教授の部屋へ入っていった
教授の安眠を保つためか
ドアが開け放たれたままになっていたので
中の様子が良く見える

しばらくして朝食が運ばれてきた

少佐は料理をテーブルに並べ終えると
オレに

「呼んだら入りなさい」

と言い残し
いったんドアを閉めた

改めて控え室の中を見渡す

きれいに整頓されてはいるが
武器が所々隠されているように感じられる

本棚には“掃除の仕方”や“マナー”についての本が多かった

不意にノックの音が客室から聞こえた

「は、はい」
「教授がお呼びだ。もう入ってもいいぞ」
「失礼しま…」
「やっぱりシュイエだ!」

オレが言い終わらないうちにそう発した相手は


「イリス…様?」
11/07/19 21:45更新 /
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