連載小説
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2
深夜の宮殿はほの暗くて不気味だと思うかも知れないが、
安全のために廊下などには十分な明かりがついている。

警備員に夜着姿でいるところを見られるのは極力避けたいので
小走りでヴォルクの部屋を目指した












――起きてなかったらどうしよう...でもでもっ



ヴォルクの部屋の前につくと
戸の前に立ち、ひとつ深呼吸。


コンコン・・・―



中から『だれだ?』と声がした。

よかった、起きてた。



「サラです・・・」


すぐに戸が開いた。
銀色の髪と、心配そうな蒼い目



「・・・サラ殿?どうしたんだこんな時間に。」
「あ・・・えっと」

目が泳いでしまう。
正直に「雷が怖くて」なんて言えなくて、
眠れなくて、と言い訳をするべきか迷っていると
何となく察したのか「まぁ入れ。」と中へいざなってくれた

ほ・・・と
肩の力がそっと抜けた

ヴォルクの声をきくだけで安心できる――








「今紅茶をいれる。」



私の頭をぽんっとさわって
カップをとりに行こうとするヴォルク



【ピカッ】



「きゃあっ―――」



ゴロゴロ...


音がやむとハッと我に返る
夢中でヴォルクの背中にしがみついていた。


「・・・だから、来たのか。」


ヴォルクは向き直ると優しく抱きしめて
よしよし、と言うように髪をなでた


言葉は少ないながらも
ヴォルクはいつも私の気持ちをくみとってくれる

心でつながっているような気がする













「私ね、雷に嫌な思い出があるんだ」



ソファでヴォルクに抱かれながら
少しずつ話し始める




「小さい頃だから、
状況はよく覚えてないんだけど

雨の中だったのに私、
自転車の駐輪場の近くに立ってて。


そのとき、私の目の前で
自転車にカバーをかけようとしてた人が、

自転車と、一緒に・・・

雷に、う、打たれて・・・」


「もういい。」




ヴォルクは言葉を遮ると
私の頭を自分の胸に押しつけた




―今でも、白い光をみると
たまに、その瞬間を思い出す


鼓膜が破れるほどの雷鳴。

黒こげになったその人と自転車。

慌てて私を、その光景からかばおうとする父の腕。―





「今日はここに泊まっていけ。」

「でも・・・」

「明日の任務は午後からの予定だ。」








――『ずっと傍にいるから、安心しろ』







そう言われた気がして
嬉しくて
小さく頷いた
12/06/03 20:33更新 / ひよこまめ。
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