とある獣人の憂鬱 R 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

自主的に来たわけではない。

「ここ……で?」

視線を外し、恥ずかしそうにマリアンヌ殿が言った。

「イヤか?」
「ん……、別に、イヤじゃないけど……」

マリアンヌ殿が、熱を帯びた眼でこっちを見た。
それが、すごく、綺麗だと思った。

「でもさ、ココ、元牢獄だよ」
「……………………」

今、それを言うか?

「ここに連れてきたのは、マリアンヌ殿だろう?」
気分、落ち込むっていうか……。
やる気なくすっていうか……。

「私は、ヴォルクが姿のコントロールできるようになればいいなって思ってて、ここなら最適ですよって、イングリフさんに言われたから、あぁ、なるほどって思ったのよ」

何がなるほどなんだ?
マリアンヌ殿は、何を考えて、ここに俺を連れてきたんだ?

「まさか、ヴォルクがこんなこと、ココでするとは思ってなかったし」

……まさかって、何だ?
マリアンヌ殿が、俺から誘ってくれないって言ったから、だから、俺は……。

今まで、我慢してたんだぞ……。

「わかった……」

俺はマリアンヌ殿から離れて、すぐ横に座って、後ろを向いて横になった。
ホントはそこから離れて走り去りたいところだったが、手足はつながれているし、俺がいるのは鍵のかかった牢獄だ……。

もう、知るか……。

「……怒った?」

マリアンヌ殿が、俺の前にやってきてしゃがみこんで俺の顔を覗き込んできた。
そのしぐさは愛らしかったのだが、向きを変えて、マリアンヌ殿に背を向ける。

もうぜったいに、ごまかされない。

「ウソだよ」

マリアンヌ殿が、そう言って俺を仰向けにして、俺の上に乗ってきた。
いつもと違うアングルのマリアンヌ殿に驚いた。

そして、マリアンヌ殿がキスしてきた。

「どこでもしてあげるよ」

綺麗な顔で、マリアンヌ殿は笑った。

「え……」
「今日はヴォルクが下ね」

いつもの無邪気な彼女から、急に変わった……。
どうして彼女が、自分の恋人なんだろうと思う時もある。

でも、彼女を、誰にも渡したくない。
……たとえどんなヘンタイだとしても。

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マ「床、嫌だったんだもん」
ヴ「………………」
マ「だって、元牢獄の床でしょ?」

10/11/28 00:35 佳純

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