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もうひとつの家族

ミケ

INDEX

  • あらすじ
  • 01 セルトママの憂鬱
  • 02 イナちゃんの発見
  • 03 モルガンさんの助言
  • 04 休憩挿話 〜ケスタロージャさんの相談〜
  • 05 のろのろと始まり
  • 06 どたどたと進み
  • 07 せかせかと向かい
  • 08 にこにこと終わる
  • 09 閉幕挿話〜すやすやと眠る〜
  • 閉幕挿話〜すやすやと眠る〜

    他人からの好意は、鬱陶しいものだと思っていた。
    確かに好意を寄せられることは嬉しく思うこともあるのだが、
    相手が望んでいることが分からなければ、その関係が続くことは難しくなるし、段々と煩わしくなるものだと分かっていたから。
    だから、同じ場所に下宿している少女が、セルトに思いを寄せているのだと思った時、僕は二つの感情を抱いた。

    それは、”安心”と”落胆”。

    安心したのは、煩わしい感情が自分に向けられて居ないと思ったから。
    落胆したのは、彼女が僕のものになり得ないと思ったから。
    自分が彼女に寄せている想いに蓋をして、彼女の気持ちにも気付かないフリをして、
    そんな感情、初めから何も無かったことにして、逃げようとしていたのに。
    彼女ときたら、そんなのお構いなしに、まっすぐ僕に歩み寄ってくれた。

    『セルトは確かに大事な人です。

     でも、私はミルズさんが気になって気になってしょうがないんです!

     ミルズさんのことが、好きなんです!』

    彼女らしい、不器用ながらもまっすぐな告白だった。
    僕が卑屈になっていることに、もしかしたら気付いていたのかも知れないと、今更ながらに彼女のシンプルな思考に感心してしまう。

    「‥‥‥‥‥。」

    彼女の目を見つめたとき、僕は正直怖いとすら思ってしまった。
    まっすぐで、嘘を吐けない事があんなにも怖いと思ってしまうなんて。

    「僕は、ずいぶんと君に感化されたみたいだよ。」

    「‥‥‥すぅ。」

    眠る横顔に、手を当てて髪を遊ぶ。
    さらりとした感触と、わずかに香るシャンプーの匂いに頬が緩む。
    自分なんかの為に、毎日一生懸命悩んでくれていたと知ったとき、
    あんなにも心が暖かく温もりを灯したのは、きっとそれが嬉しかったからだ。
    だから、彼女がしてくれたような真っ直ぐな告白をするつもりだったのに。
    ひねくれた、天邪鬼な答えしか返せなかった。
    思っているのに言わないのは、包んだプレゼントを渡さないのと同じだと、
    誰かが言っていたのを思い出す。

    「僕も好きだよ、ありきたりだけど‥‥‥ずっと傍に居てほしい。」

    「‥‥‥うん、だいじょ、ぶ‥‥‥すぅ‥‥‥。」

    「‥‥‥あはは、敵わないな。」

    多分、寝言なのだろうけれど。
    布団の中で身じろぎしながら、なんとも幸せそうに眠る彼女のまぶたに、
    小さく唇を落とす。

    『おやすみなさい、彼方も優しい夢が見られますように』

    さっき耳元でそう言ってくれた彼女に、同じ言葉を返す。
    願わくば、夢の中でも笑顔の君に会えますようにと、願いを込めて。

    「おやすみ、良い夢を。」











    『だからミルズさん、どこにも行かないでください!』

    その一言に救われた、でもその事はまだ秘密。

    いつかちゃんと、君に話すから。



    ‥‥‥ありがとう。

    それ以上の言葉は、多分無いよね。

    11/01/29 23:08 ミケ   

    ■作者メッセージ
    閉幕挿話と題しまして、最終話のあの後の話(ミルズさんside)でした。
    やっと書き終わりました!
    そこまで長い話ではなかったのですが、長かったような気がするのは、
    たぶんUP時期がまちまちだったからだと思われます、ごめんなさい。

    ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。
    満足いただけたかどうかは、分かりませんが頑張りました。
    いつかまた出没していましたら、生暖かい目で見守ってやってください。
    それでは!
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