連載小説
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真夜中、みんなが寝静まった頃



私はひっそりと庭に出た




『気持ちいい風…』







風が木々を揺らす音が聞こえる




その風に乗って声が疑問気に投げかけられた



「教授……?」



声の方に振り向くと、宮殿の可愛らしい庭師がいた




『シュイエ。どうしたの?』


「いえ…あの、雪凪様をお見かけしたので……」


『こんな時間までお仕事してて……シュイエお疲れ様。私も何か手伝おうか?』


「いえそんな…もう終わりましたから、その…雪凪様こそここで何をしていらっしゃるんですか?」


『私?なんだか寝付けなくて、少し外の風にでも当たろうかなぁって思ってて。あっエルザには内緒ね。すごく心配しちゃうから』


私がそういうと、シュイエは小さく笑った




「はい。……あの、ご一緒してもよろしいでしょうか?」



遠慮がちにシュイエは一歩前に出た




『もちろん』



私はシュイエが座れるように少し横にずれた






































『シュイエって、好きな人いる?』


するとシュイエは驚く位顔が真っ赤に染まった



『って、ちょっ大丈夫?聞いちゃまずかったかな』


「す、す、すいません。だ、だいじょう、ぶ…です」




シュイエは落ち着くために一息呼吸をした。




「す、好きな人…ですか?」


『う、うん。あっでも無理に答えなくても平気―――』


「い、います」



一分。いやもっと早かったが、自分の中ではそのくらい停止していた。





「雪凪様?」

『ほ、本当なのシュイエ?お、お、おめでとう!良かったねぇ!』


「いえ、片想いですから」


『そんなことない。ないよ!シュイエが好きな人ならシュイエのこと好きだって』



するとシュイエは優しく微笑んだ



「ありがとうございます。その、雪凪様は、いつもご自分のように喜んでくれますが、どうしてですか?」


『え?だって、シュイエの幸せは私にとっても幸せだから』



シュイエは驚いた顔をした



「そのようなことを言われたのは産まれて初めてです」



シュイエは大切な言葉を胸にしまい込むかのように心臓に手を当てた



「俺も、雪凪様の幸せが笑顔が、俺にとっての幸せです」



『本当?ありがとうシュイエ』




シュイエは顔を上げると真っ直ぐな目で私を見た



「――あの、雪凪様は」



『ん?』




シュイエは唇を強く引き結んだ




『シュイエ?』


「雪凪様は、なぜそのようなことをお聞きになったんですか?」


『あっそうだった。えっとね…ある子がとある少年に片想いしてるんだけど。なぜかその子に私嫌われてるんだよね。なんでだと思う?』


「雪凪様が、ですか?」


『うん』


シュイエは信じられなそうな顔をしたけど、それは一瞬で、その後何か考えているようだった




「あの…あってるかどうかは分かりませんが、よろしいでしょうか?」


『うん。参考に聞くまでだから』


「例えば、嫉妬してるとかじゃないでしょうか?」


『嫉妬?』


「いえ、その……本当のところは分かりませんが。もし俺がその立場でしたら、好きな人が他人と仲良くしているのは、あまり好ましくないといいますか、嫌な気持ちになるといいますか……」


『なるほど……うんうん。そっか、そうだよね』




シュイエの言ってることはすごく分かる。思い出せばフィーナ様と出会ってしまったところがあの場面なんだし……勉強していただけなんだけど、そこをもしかしたら勘違いしてるかもしれない










『ありがとうシュイエ。やっぱり好きな人がいると言うことが違うね』





私はシュイエの両手を握った。



「あっえっ…その…」



すると遠くから私の名前を呼ぶ声がした



『あーあ、エルザに見つかっちゃった。それじゃあねシュイエ、また明日』




私は夜にシュイエと一緒にいるとシュイエの方が怒られてしまうので、急いでその場から立ち去った




















シュイエは一人、雪凪の握った手を見つめた





「聞けなかったな……雪凪様には好きな人がいるのかって」



12/05/26 18:32更新 / nayo
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