読切小説
[TOP]
言えるかよ、バカが・・・

「第62回、卒業式を――・・・



かったるいアナウンス、 変に重い空気・・・

どうもこういう行事は嫌いだ。

それに、この卒業式は・・・・ あの人がいってしまうから――・・・





「千葉ぁー?おまえ、この後どうする?」

「あ?」

ツレの声も、耳に入らない。
無意識の内に、あのひとの姿を追っていた。



「俺はいいわ、じゃーな」


ガラでもなく、校舎に残って あの人の面影をたどろうと、
知らぬ間に足は、あのひとの教室に向かっていた――・・・



「(誰かいる・・・あれは―・・・)」


「ち、ばくん・・・・だよね?」



ずっと聞きたかった声――・・・
俺の名前が紡がれる・・・


「卒業、だね・・・今まで、ありがとう」


俺だけに向けられた、
儚げで壊れてしまいそうな笑顔――・・・



上手く言葉に出来なくて、そのまま背を向けて教室を出ようとしたとき


「待って」


 くん と 袖を引かれて立ち止まった。


「わたし、今日卒業なんだよ?
 千葉君から、まだ何も聞いてない・・・」

顔を見れない。
・・・オレが振り返れないから。

「千葉君・・・」

言葉に出来ない。
・・・だって知っているから・・・・



     俺の気持ちも  
      
              あんたの立場も――・・・・




「別にねーよ。」

「千葉君!!!」


引き止められていた、か細い指を払い、
オレは振り向かずにその場を去った。

きっと泣いてる。
泣かせたのはオレだ・・・・



「(言えるかよ・・・バカやろーが・・・!!)」


 気づかなきゃよかった・・・
           こんな気持ちになるぐらいなら・・・


     知らなきゃよかった・・・

    あんたとアイツの関係なんか・・・・


             

 

             「好き、だ・・・っ」




その呟きは、誰にも聞こえる事無く、春の風に消された―――・・・・

11/03/09 22:29更新 / ろぃ

■作者メッセージ

千葉君、かっこいいですよね。

強引俺様系なイメージだったので、
こういう人が、
こういう弱い部分っていうか、
悩んだり、悲しんだりしてるの・・・好きです!←


はい、ありがとうございました。

TOP | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.30c