連載小説
[TOP][目次]


『はぁ…月がきれいだなぁ…』


雪凪はまた部屋を抜け出し、庭園に来ていた



「雪凪殿……」


雪凪はビクッと肩を震わせた


そしてゆっくり振り返った



『ヴォルク…驚かさないでよ…』

「また、部屋を抜け出しているのか」


ヴォルクはゆっくりとした動作で雪凪の隣に座った


『ヴォルク、酒臭いよ』

「祝宴をしていた」

『あ、そっか!ヴォルク昇格したんだもんね。おめでとう!』

「何回も聞いたぞ」

『いいじゃない。ヴォルクは人一倍頑張ってるから、私それが認められてるみたいで本当に嬉しいよ』



雪凪はまるで自分のことのように喜んだ


ヴォルクは眩しそうに目を細める



『そうそう、それにさっき丁度ヴォルクのこと考えてたから』

「俺を?」

『今日は満月だから、外に出てきたの。なんか眺めてたら月ってヴォルクに似てるなって思って』

「狼だからとか言うのか?」

『違うよ。ヴォルクってほら、いっつも付いてくるでしょ月みたいに』

「それは雪凪殿がそそっかしくて見てられないのと、俺が護衛隊長だからであって…」

『あっははっ…そんなに必死に言わなくても迷惑とか思ってないから。そそっかしいのは余計なんだけど』

「本当のことだと思うが」

『……と、とにかく私が言いたいのは』


雪凪は月から視線を外し、ヴォルクの目を見た



『いつも見守ってくれてありがとね。ヴォルクといるといつも元気にしてくれるから』



雪凪は優しい笑顔で言った



ヴォルクは思う



 ああ俺は




 この笑顔がほしい


 

 俺だけに向けて欲しい



 
 雪凪殿の全てが欲しい







『ほら、そう考えるとやっぱヴォルクと月って似てる…――きゃっ』



ヴォルクは雪凪を覆いかぶさるように倒れた




「雪凪……」


『えっ…何…?てか近いよヴォルク…離れて…』



その瞬間、ヴォルクは唇を奪うかのように熱いキスをした




『……っ……』





そしてそっと唇を離すとヴォルクは満足そうに微笑み



そしてそのまま意識が途切れた
11/10/18 15:36更新 / nayo
戻る 次へ

TOP | RSS

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.30c