読切小説
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*春の小さな物語*
「あ、掌くんだ! 掌くんおはよう♪」
「・・・・・・・・・」
コイツはいつも朝からテンションが高い。
オレは比較的朝は機嫌が悪い。
いつもの事なんだからいい加減気付けよ・・・。
そんなことを思いながらオレはアイツをシカトする。
・・・いつからだ。
コイツがこんなにオレにかまってくるようになったのは・・・。

「・・・っ はっ 離してください・・・!!」
春、小雨が降る夕方に、アイツはいた。
いつもオレが通る路地裏で、女が騒いでいた。
・・・不良に絡まれてんのか。
どっちにしろ邪魔だし・・・仕方ねぇ。
「ぁん? なんだよテメェ 邪魔すんじゃねーよ!!」
「・・・こっちのセリフ」
そう言って男の腹に一発入れてやった。
すると男達は舌打ちしながら去っていった。
「・・・あ あの・・・」
涙ぐんだ女がこちらを見ている。
「・・・平気か」
「は はい あのっ・・・ありがとうございます・・・っ!!」
これを言うのが勢いっぱいといった感じでぼろぼろ泣いている。
よく見るとうちの学校の制服だ。
リボンの色からして多分3年生だろう。
「・・・っあれ・・・?」
「・・・? なんだよ 立てないのか?」
「!! ち 違いますっ あの・・・っ」
・・・今更何に意地を張ってるんだか。
「はあ・・・。仕方ねぇな・・・。ほら」
「・・・へ・・・?」
女は一向にオレの意図を理解していない様子。
なんて面倒臭い女なんだ・・・。
「早く乗れよ」
「・・・へっ!? い いや あの でも・・・」
やっと気づいたらしい。
「乗らないならこのまま放置するけど。」
そういうと、女は黙ってオレの背に乗った。
「す すみません・・・」
「別に・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・しばらくの沈黙の後、女は言った。
「あの・・・お名前 なんていうんですか・・・?」
「・・・は」
学校のヤツとあまり関係は持ちたくないんだが・・・。
「・・・掌」
「掌くん・・・ですねっ! えと 私は蒼葉っていいます!」
「・・・アンタ年上なんだから敬語じゃなくていいだろ」
「えっ!? そ そうなんですか!」
「えっと・・・じゃぁ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・?」
アイツは少し離してた体を急にくっつけてきた。
鼓動が少し早くなる。と同時にいい香りが鼻をくすぐった。
「・・・っ!?オイ・・・」
「すぅ・・・・・・」
・・・・・・・・・・・。
この状況で寝るか?普通。



「あ 掌くんおはよー♪」
そして今に至る訳だ。
ボランティア活動でも、路上でたまたま会った時も。
アイツはいつでも笑顔だ。
アイツが笑ってると、周りの雰囲気までも明るくなる。
オレはそういうアイツのところはすごいと思う。

今日もぱたぱたと足音を立ててオレの所にやってくる。
それを少し可愛いと思ってしまったオレは、
言うまでもなくアイツに惚れてしまったのだろう。
「・・・・・・・・はよ」
ほんの少しだけ笑ってそういうと、
アイツは少し驚いた顔をして、
そしてとびきりの笑顔を見せてくれた。
11/03/09 18:56更新 / 恋うさぎ

■作者メッセージ
掌くん目線です(。´ω`)
個人的にすごく掌くんが好きです♪
キャラがあってなかったらごめんなさい・・・ww
初投稿なので至らぬ場所がすごくあると思います(´・ω・)
御感想くださるととてもうれしいです(。ノωヾ)♪

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