連載小説
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朝露と…
僕が始めてその子に会ったのは
雨の日だった



記憶も何もなかった
あるのはただ冷たいという感覚だけ
それすらも感じられなくなるほど
降り続く雨の中
僕はずっとそこに座り込んでいた
感情は持たなかった
時折思うことは

僕は何をしているのだろうか
僕はいつからこうしているのだろうか
僕は何故ここにいるのだろうか

という疑問だけ


何かが当たった
たぶん石かな?
いつも誰かがぶつけてくる

キミガワルイワ
メザワリヨ
ドッカイッテチョウダイ
フキツダ
ナンダコイツ
コッチミタゾ
キエロ

いつも違った誰かが…
ほら
また何かが落ちてきた

僕は何故ここにいるのだろうか

ドッカイッテ

僕はナゼここにいるのだろうか

アッチイケ

ボクハ何故ココニイルノダロウカ

チカヨラナイデ

ボクハナゼココニイルノダロウカ

ヒドイコトスルヒトドッカイケ

ボクハココニイテハイケナイノニ…

コノコニチカヨラナイデ!
イシナンテナゲナイデ!

ボクハ…

シッカリシテ!

…?

ダイジょうブ?
ワタしノ声キコえテる?

見ると先程落ちてきた何かは
まだ温もりのある小さな上着だった

寒くない?

そう声をかけてきたのは
小さな女の子だった
僕のほうに傘を傾けて心配そうに覗き込んでいる
雨の日にしては薄着だった
ああ僕に上着をかけているからか

痛かったんだね
傷跡がいっぱいある!
もっと泣いていいんだよ?

…もっと?
僕はその手で頬を触ってみた
ヌルヌルとした液体がそこにはあった

……あり…がと…う…

その小さな女の子は声が聞こえなかったのか
小首をかしげていた

思えば人と口をきいたのも
この時が初めてだったかもしれない…



移り変わりの11/10/23 17:58
温度の調和11/12/07 18:40
優しい言葉12/02/14 21:43
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